第34話 ルーズベルトの誤算と...
ーホワイトハウスー
ルーズベルトにとって最大の誤算はドイツが対米宣戦布告をしなかったことだった。これはアメリカの戦争計画を大きく狂わせた。ドイツと戦争をしないということはアフリカ戦線で苦戦している英軍に物資の支援しかできないということだ。せっかく真珠湾に生贄として主力戦艦群を配備したのが無駄になってしまった。もう一つはフィリピンが70日ほどで降伏したことだった。極東軍司令官のダグラス・マッカーサーがコレヒドール島でフィリピン首相や参謀幹部と共に戦死したことはただでさえ劣勢な極東軍に布石を打ったのだ。コレヒドール及びバターン半島に対し行われた日本軍の軽巡クラスと思われる艦からの艦砲射撃は11万人(当初在比米軍は15万人いたがマニラやバターンの地上戦闘ですり減っていた)の残存軍の内7万人を消し飛ばし2万人を負傷者に変えた。降伏までの3日間で行われた戦闘で生き残ったのは僅か2万5千人であった。
「大統領、太平洋艦隊司令部より書簡が来ております」
ホワイトハウスは正午前の日差しに白い外壁がくっきりと照らされていた。ルーズベルトは自らの書斎で書類に目を通し、あるいは新規建造計画に承諾のサインをしるし、アフリカ戦線のイギリス軍の苦境を訴えるイギリス大使館からの嘆願文を読んでいたところだった。封筒には最重要機密と書かれ、送り主はチェスターニミッツとなっていた。まあこれらの書簡は大抵政府専用の運搬車で運ばれるので別にそこまでしなくてもいいことなのだが律儀なことだ。ざっと目を通して思わず笑い出しそうになった。
「ニミッツに知らせてやってくれ。この案を承諾する、日本人に面白いものを見せてやってくれと。」
そう言うとルーズベルトは腰をあげた。
「しかし、もう少し検討を重ねる必要があるようだ。海軍長官を召還してくれ....」
※補足
在比米軍は降伏した時ほぼ壊滅状態だったため、バターンの死の行進は発生せず捕虜は海軍の協力もあって海路で台湾の収容所に運ばれた。
ドイツがアメリカに宣戦布告をしなかったためこの世界線では対日戦のために多くの工業力が注ぎ込まれアメリカの艦艇建造ペースは史実よりも速く多い(特筆するものにクリーブランド級やカサブランカ級、フレッチャー級、エセックス級など)。(もちろん連合軍にはレンドリースをしているがアメリカ所属の艦艇は大西洋で戦わないため多くが太平洋に回航された)
またそもそもドイツがアメリカに宣戦布告していないため、連合国共同宣言が存在せずアメリカは対日戦においてのみ英仏蘭豪などの連合国と共闘しているものの正式な連合国ではない。レンドリースも史実に比べて規模が小さい。
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