第31話 コレヒドール島陥落
風で硝煙がさらわれ、視界が回復した後三友が目にしたコレヒドール島は先ほどとは一変していた。鬱蒼と茂っていた林は一部を残して完全に薙ぎ払われ、至る所に沿岸砲台の跡とみられるコンクリートの台座が表面をぼろぼろに破壊され、まきあがって積もった土の中から頭を見せていた。砲撃前は各所にあった兵舎は木片に変えられ、迫撃砲や対空砲、露出していた沿岸砲はきれいさっぱり消えていた。コンクリートで守られていたトーチカ型の砲台も数発以上の15㎝砲弾を喰らったのか天蓋に大きな破孔を穿たれ沈黙していた。そして三友が何より驚いたのはその瓦礫の一部がぽっかりと落ちて地下空間らしき空洞が見えている場所がいくつかあったことである。満州や旅順などの近郊にこのような友軍の地下要塞があることはしっていたが米軍はこんなちっぽけな島にそれに匹敵する要塞を建設していたのだ。相当な労力と資材が必要であろうし、逆にその地下要塞に一体何千の兵力が配備されていた、もしくは配備される予定だったのだろう。事前の情報ではこのようなものがあるとは聞かされていなかったから我が軍は米軍の戦力を見誤っていたことになる。背筋に冷たいものが走った。もしかしたら陸軍はこの戦力のせいで大損害をだす可能性だって考えれれる。そうすると、見つけたからには徹底的に潰さなければ。編隊の他の一式水偵は着弾観測結果を母艦に報告していた。
「阿賀野より入電、〝砲撃ヲ再開スルタメ退避サレタシ〟だそうです」
後部座席の電信員が言う。三友が機体を上に上げ下を見下ろしたとき丁度着弾の粉塵があがった。今度はピンポイントで地下要塞の入口や破孔、トーチカを狙って射撃をしている。弾薬庫に誘爆したのか地表がせりあがるように内部から爆発が起こった。生き延びられる者はいないだろうと思うぐらいその爆発激しかった。フィリピンの米軍が降伏を受諾したのはこの3日後だった。
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