第28話 比島戦闘回想
対空砲火も零戦の機銃掃射で弾薬が誘爆して台座ごと消滅したり、機銃員が20㎜弾をもろに喰らってぼろきれのように吹き飛びあたりが紅の泥濘に塗りたくられ、更に攻撃隊の第二陣が到着してからは反応も殆ど無くなっていた。
その後10日にも実施された空襲で比島の航空戦力は一掃されるのだが、比島近海には第二艦隊の艦艇の他にも第二艦隊隷下の第四航空艦隊も遊弋していた。こちらはマニラ湾に攻撃隊を送り、停泊していたタンカーや輸送船を撃沈する戦果を挙げていた。
第2艦隊の大半の艦艇は海南島かトラックから出航し、一部は南遣艦隊のマレー方面にも展開していたから比島の近くに第2艦隊の艦艇はあまりいなかった。第2艦隊はアジア艦隊の残存艦艇を掃討すべく包囲網をしくが、あいにくそれを脱出しようと試みたアジア艦隊の艦艇との3度の海戦の場に阿賀野型はいなかった。
アジア艦隊の駆逐艦以上の艦艇は開戦前に事前に蘭印方面に分散退避していたのだ。脱出しようとした艦艇は魚雷艇や掃海艇程度のもので、全て撃沈あるいは拿捕された。
20日、一四軍は予定通り上陸しタバオを攻略し、銀輪部隊の活躍もあってマニラは26日に無防備都市宣言をし、1月2日に無血開城した。だがこれは米軍が戦わずしてバターンに後退したからだった。
同地の防備は厳重で更に大本営が蘭印作戦を開始したため第48師団と第5飛行集団が引き抜かれ、結果的に攻勢は大敗北に終わった。この時点で高雄型4隻はちょうど蘭印方面に移動した後で、第四航空艦隊は攻略の手こずっていたウェーク島に支援に向かったため有力軍艦といえば阿賀野型ぐらいしかいなかった。
第十戦隊は主に船団護衛に勤めていたがこれは速射砲の対空火力を買われたからであった。それは第十戦隊の将兵にとって暇で仕方がない退屈な任務であったが...。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『阿賀野型軽巡洋艦』
(諸元)
基準排水量:8,920トン
全長:195m
全幅:18m
速力:37.5ノット
(武装)
15.5cm連装速射砲3基
10cm連装高角砲5基
25mm3連装機銃8基、同連装6基、同単装12基、
(搭載機)
水上機4機[最大6機]
(同型艦)
就役済み、阿賀野、矢矧、能代、酒匂
竣工済み、米代、久慈
建造中2隻(大淀、仁淀)
建造予定4隻
(説明)
第四次海軍軍備充実計画で計画された新型軽巡の案が発展したもの。水偵の搭載能力は類を見ない。十勝型航空母艦は阿賀野型の船体設計を流用して作られている。起工が早かったため就役が開戦前に間に合った。対空巡というよりは多目的巡洋艦であり、その分間砲弾投射量は重巡を上回る。開戦時、雷装がなく熟練度も曖昧な本型は主に船団護衛を担当していた。なお主砲の損耗が激しいため砲身交換専用の阿賀野の船体を流用した補給艦「房総型」が建造されている。
絵
https://kakuyomu.jp/users/3710minat/news/16818093090542776249
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます