第16話 三神と九六艦爆
『リヴェンジ級戦艦』
(諸元)
基準排水量:29,150トン
全長:190.3m
全幅:27m
速力:23ノット
(武装)
38.1cm連装砲4基
15.2cm単装速射砲14基
7.6cm単装高角砲2基
4連装ポンポン砲15基
(同型艦)
リヴェンジ、レゾリューション、ラミリーズ、ロイヤル・サブリン、ロイヤル・オーク(1939年にスカパ・フローで独潜水艦の雷撃により沈没)
(概要)
クインーエリザベス級の廉価版。当初八隻の建造が予定されたが第一次世界大戦の勃発により五隻にとどまった。低速のため主に船団護衛をしていたが潜水艦に対し無力で対空防御も貧弱な同級を持て余していたため、若干の対空兵装を強化し東洋艦隊に派遣された。諸元にはないがその他の機銃も搭載している。果たして25年前の戦艦が役に立つかは不明であり重巡の方がいいという前線の者も少なくはない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「そろそろ敵艦隊が見えてもおかしくないはずだが.....」
後部座席の高橋が呟く。この九六式艦爆は複葉なので視界が悪い。
「おい、2番機の様子が変だぞ」
操縦士の三神が言う。後続していた2番機が盛んにバンクを繰り返し、何かをうながしてる。近寄ってみると後部座席の搭乗員が手信号で何かを伝えてきた。
「敵艦を見ゆ、右後方だと!」
「チッ、無線があればな。隊長機に伝え信号弾を打ってもらおう!」
三神の2番機が隊長機へ接近し高橋がしばらく手信号をやり取りした後信号弾が打ちあがった。編隊が旋回し2番機が進む方向へついてゆく。既に4分をロスしていた。数分進んでやっと敵艦が見えてきた。奥に大型艦が続いている。
「敵艦隊発見!」
隊長機から突撃命令の信号弾が打ちあがり祥鳳、龍驤所属の九六艦爆11機が手前の戦艦と思わしき艦に隊長機に続いて降下を開始する。複葉機独特の金属がきしむ音が響く。対空砲火はそこまでではなかったが鈍足の旧式機には脅威だ。そのときだった、後続する2機が一瞬で火を噴いて散った。
「敵機上方!」
複葉機の一番視界が悪い上方から敵機が待ち伏せ攻撃をしてきたのだ。九六式艦戦も2機が吹き飛ぶ。すぐに戦闘機隊が反転したがふいを突いて先制攻撃した敵の方に分があった。そもそもこっちは旧式機だ。数でも優劣は明らかだった。敵機は護衛の無い攻撃隊をまるで訓練の標的を撃ち落すかのように次々と撃墜していく。三神が離脱しようかと思い始めた時に敵機の一機がこちらに狙いを定めてきた。後部座席の7.7㎜機銃を高橋がぶっ放す。一方の敵機もしつこく撃ちながら追ってくる。ズカっと鈍い音が翼の方からした。見ると3センチぐらいの穴が開いていた。曳光弾が上をかすめ、もう駄目かと思い、せめて道連れにしようと操縦桿を傾けた。その途端に敵機が火を噴いた。見上げると日の丸を付けた機体が幾つも横切った。ほっそりとした胴体に、丸みを帯びた翼。(零戦だ!)三神は歓喜した。隼鷹か飛鷹の所属機だろう、それらの艦載機は新型で足が速いからてっきり先に攻撃してるのかと思ったがどうやら敵艦隊の発見が遅れたようだ。敵戦闘機が次々と撃ち落されるのを見て三神は次こそはと機体を敵艦に急降下させた。
「てっ」
レーバーを倒すと、ガクゥインという音がして爆弾が切り離された。後続する3機も次々に投弾する。海面すれすれで機体を引き起こし水平飛行に移ったとき、ちょうど爆弾が命中した。炸裂音が2回響く。
「2発命中!」
上昇して敵艦隊を確認したとき、大型艦2隻から爆炎が上がっていた。片方は隼鷹、飛鷹の九九艦爆の戦果だろう。そこへ新旧混合の雷撃隊が投雷する。被弾で2隻とも舵がやられていたようだ。片方に4本、もう片方に3本の水柱が立った。所詮旧式戦艦だ、片方は弾薬庫に誘爆したのか大爆発をおこし沈没し、もう一方も転覆し水面下に姿を消した。第二次攻撃隊が到着したのはちょうどその頃であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます