第14話 一式水偵
羽川少尉が敵機を確認したとき、既に電信は済んでいた。
「敵機右後方!」
後部座席の由良が電信を打ち終わり、旋回銃に手をかける。
「さあて、ついてこれるかな」
羽川はそういうと機体をバンクさせ上空から離脱した。羽川の乗機、一式水上偵察機は最高速度448km/hであり、イギリスの主力艦上戦闘機フェアリーフルマーの398 km/h よりも速かった。当然ついてこられるはずがなく、2機のフルマーのパイロットは驚いた。(水上機のくせに逃げ足が速い!)。なお一式水偵は史実では開発中止になった十二試二座水上偵察機の正式採用版で愛知と川西が協力して開発したため史実機よりも圧倒的な性能を誇る。また、ドイツの技術提供の影響も割と強い。だが驚いたのはこれからである。その足の速い水上機がくるりと反転し、こちらに向かってきたのだ。フルマーのパイロットは敵が立ち向かってくることなど思ってもみなかった。それが命取りになった。機首と両翼に一つづつの13.2㎜機銃3基が火を噴き、右側のフルマーの操縦席のガラスが真っ赤に染まった、と思った瞬間にはその機は既に視界から無くなっていた。残る一機は当然反撃をする、僚機が撃墜されたのはまぐれだと思いながら。だが一対一のドッグファイトでは一式水偵の方に利があった。フルマーが後方に回り込むと後部の旋回機銃が応戦するのだ。フルマーも複座で後部に旋回機銃を搭載できたがこの機体はあいにく搭載してなかった。逃げ足の遅いフルマーは後方に回り込まれ、発動機に機銃を撃ち込まれ撃墜された。羽川の一式水偵は空母から追加のフルマーがあがってくるまで3機のソードフィッシュを撃墜し、艦隊の全容を把握してから離脱した。足の遅いフルマーが深追いすることはなかった。
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「たかが水偵相手になにをやってる!」フィリップスはそう激怒したが迎撃機があがった時には敵機の姿は艦隊上空にはもうなかった。更にその数分後に起きたことに度肝を抜かれた。上空のソードフィッシュが撃墜され居ない所を突いて敵潜が雷撃をしてきたのだ。いや、水柱が立つまで雷撃だとすら気づかなかった。立て続けにロドニーに2本の水柱が立つとともに外輪の駆逐艦にも命中したようで、船体が真っ二つに折れその駆逐艦は轟沈してしまった。ロドニーは戦艦なので流石に沈没するようなことは無いが浸水で速力が13ノットに低下してしまった。更にロドニーは航行はできたが、進むと被雷部分に水が入り浸水が増すため結局は停船せざるおえなかった。そこに第二の雷撃がきたのが十分余り後のことだった。驚いたことに日本軍の魚雷は雷跡が見えないのだ。この攻撃で巡洋艦ネプチューンが1発被雷し艦首が切断され航行不能になった。更に旗艦のネルソンが1発被雷し、こちらは最小限の被害だったがやはり16ノットに低下してしまった。また、駆逐艦が一隻被雷し魚雷の誘爆で轟沈した。そしてやっと到着したソードフィッシュが投下した爆雷が海面に油と鉄塊の破片を浮かばせたのを見て、やっと艦隊は進撃を開始したが、なんとZ1の戦艦レゾリューションがまたもや雷撃を受け轟沈してしまった。ロドニーは艦隊から脱落したので戦艦は5隻となってしまい、さすがにフィリップスも撤退を考え始めていた。
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