第8話 水面下の戦闘
「推進音、極めて大。艦長、空母です!」
聴音員が艦長の三郷に喜びながら報告した
「でかしたぞ!」
三郷は次官の方を向いて命じる
「前部魚雷室に連絡!、1番から6番までの魚雷発射管注水!」
「了解!」
次官は電話を手に取り魚雷室に連絡する
「1番から6番までの魚雷発射管注水せよ」
「メインタンクブロー、潜望鏡深度まで浮上!」
メインタンクから徐々に排水が開始され艦は少しずつ浮上し始めた
この時、レキシントンを護衛していた駆逐艦コリーでは正体不明の音がわずかに探知されたが、雑音だとして聴音手は特に気にも留めなかった。この伊二百一型潜水艦はブロック工法を採用しており溶接するだけだったので量産性にも特化していたが、何よりこの溶接により艦の静粛性が今までの潜水艦よりも圧倒的に優れていた。漸減戦術の見直しと大和型の中止によりこれらの潜水艦は新しい主力とみなされ多くの労力と資金、技術がつぎ込まれていた。三郷は潜望鏡を覗いて方向の最終確認をすると、思わず驚いた。数百メートル先に空母が横腹を見せて航行していたからだ
「1番から6番てっ!」
発射管から6本の電池魚雷が時間を置いて発射された。数十秒後、鈍い炸裂音が最初に2回、少し後に1回響いたのを確認したあと艦はその爆音に紛れて全速力で離脱した。かなり離れてから潜望鏡を上げたとき、レキシントンは赤い船底を横にしながら激しく燃えていた。弾薬に誘爆したようだ。三郷は戦果を確認したので、新たな獲物をしとめるべく艦を潜航させた。
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その頃、南雲機動艦隊は補給艦隊と接触し燃料、弾薬の補給を受けていた。
「これが鷹野型高速補給艦、か」
駆逐艦花月の艦長、加山はその異様な形の艦をみて思わず呟いた。160mと大柄な船体は高速輸送艦のものを流用し、重油7000トンやその他艦隊に必要な物資1000トンを積載可能だ。だが最大の特徴は全通甲板を有していることであろう。艦隊補給艦だが輸送作戦や船団護衛に投入することも見据えてのことだ。艦載機は九七艦攻14機と零戦6機であり、格納庫は一段だけである。そして異様なのはこれが全通甲板なのに補給艦ということだけでなく、艦首に一本の射出機が格納庫から突き出ていることである。
『この短い飛行甲板では艦攻の発艦は難しいのではないか』
もちろんそういったことは新規開発の埋込式射出機で解決するはずであった。だがその射出機の開発が想像以上遅れ(宝龍型の投入がされなかった背景にはこれがある)鷹野型は真珠湾攻撃に使うので開戦までに完成させる必要があったため従来型の重巡などに搭載する射出機を使い格納庫から直接発艦できる方式が採用されたのだ。かなり斬新なアイデアだが用兵側としては評判はいいらしい。同規模の小型の特設空母にはこの方式が採用されたが、軍部は雲龍型の後期建造艦をこの方式で完成させるという噂も流れてる。4隻の鷹野型は駆逐艦などの小型艦から順に燃料補給をするとともに、自艦の航空機を7隻の空母に補充機として提供していた。
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