第6話 事後処理
敵機が去って数分経った頃、報告が入った。
「南雲司令、加賀より入電『ワレ被弾二、飛行甲板及び機関損傷の為、戦闘航行不能』」
「乗員を救助次第自沈せよ」
南雲はすぐに命じた。加賀の受けた被害では内地まで曳航するのは不可能だと思われたからだ。
「了解!」
電信員が足ばやに去っていくと南雲は作戦司令室へと足を急いだ。南雲が部屋に入った時既に参謀の主だった面子は揃っていた。皆加賀の損失には驚いていたが、もう落ち着いたようだ
「南雲司令、先ほど三隈機より続報があり、敵艦隊は空母一隻を伴うそうです。」
鳩羽が報告する。
「ではその艦隊を両と仮称する」
南雲は言った
「加賀を襲った機体は単発の艦上機でした。恐らくハワイの撃ち漏らした基地から飛来したものと思われます。」
加崎がそう言う
「なぜそう思う」
「敵爆撃機にはP40の護衛が付いていましたし、そもそもこの距離では燃料が持たないでしょう」
「あるいは空母艦載機が一旦ハワイで給油して来たのかもしれんぞ」
今部屋に入って座ったばっかりの藤井次官がそう言う
「どちらにせよ敵基地がまだ残っていたということだな」
と草鹿。
「いえ、先ほど電信で第三次攻撃隊がハワイ真珠湾から北西の位置に無傷の飛行場を発見、完全に破壊したそうです。偵察機も燃料切れで不時着する敵機を確認しています。」
「では陸上基地からの脅威は無くなったということで作戦は立案することでいいか」
「はい、ですがカタリナ飛行艇などは残ってるでしょう。なので、常に哨戒には警戒されることをお忘れなく」
「分かった。」
「ところで皆さん、忘れているようですが敵の空母は二隻です。両がミッドウェー沖だとして、もう一方の発見を急ぐ必要があります」
「それは艦攻を偵察機としてさらに出撃させる。ハワイの航空脅威がなくなった今、索敵線を広げても危険はないだろう」
南雲は索敵機を出すよう命じた。
「では本題の両の米空母ですが、どうしますか」
鳩羽が問った
「先に見つけた方を叩くのが今できる最大のことだろう」
加崎が言った
「だが両との会敵はそれこそ距離的に日没後になるぞ」
「そうなると艦上機の着艦が難しいが、ではどうしろというのだね」
鳩羽が返す
「ここは我が機動部隊は撤退し、潜水艦に任せるのはどうですか?」
草鹿が提案した。事実、ハワイ作戦の前踏みとして20隻以上の潜水艦がハワイ周辺に展開していた。
草鹿は続けて
「我が艦隊は加賀を失い、そして弾薬や機体も損耗しました。搭乗員にもかなりの疲労がたまっていますし、不利な敵空母がわざわざ我々に戦いを挑んでくるとは思えません。索敵の結果は潜水艦隊に伝え、我が艦隊は北方に留まっている補給艦隊から再び弾薬、物資、燃料の供給を受けてはどうですか」
「それでは敵の空母戦力を削ぐせっかくの機会を逃してしまう」
藤井が反論する
「いや、確かに補給を受けるのも有りだろう。だがみすみす敵を取り逃がすのも.....」
南雲は加崎の方を見た。
「確かに空母を取り逃がすわけにはいきませんが、空母戦が日が変わってからとなると、それなりの余裕もあります。ここは草鹿参謀の案に賛成です」
「では補給を受けることでいいな」
この司令はすぐに二航艦にも伝えられ両艦隊は北上し始めた。また、潜水艦宛に発見した両の座標が送られた。
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