第3話 南雲、考える
第一次攻撃隊の艦載機が帰還したとき、南雲ハワイ作戦司令兼一航艦司令は付近の海域の偵察を命じた。着艦してくる攻撃隊を見て南雲は思わず呟いた。
「宝龍型があればな」
南雲の言う伊勢型とは伊勢型戦艦を空母化した宝龍、神龍の2艦である。
「着艦終了しました。一航艦での第一次攻撃の出撃機数は135機、損失は7機、作戦不可能な損傷機10機、予備機を含めて作戦可能機数は195機。二航艦は出撃117機、損失7機、損傷12機、予備機を含めて作戦可能機は170機です。」
次官の報告が終了した。
「次に戦果です。無電で第二次攻撃隊指揮機から報告がありましたので2派の累計です。戦艦6隻の撃沈、2隻の大破を確認しました。大破の内の一隻は船渠に入っていたため撃沈は不可能ですが、もう一隻の方は浸水によりかなりの傾斜のためじきに沈没すると思われます。巡洋艦は5隻、駆逐艦は13ないし14の撃沈を確認。また艦種不明艦艇30隻あまりの撃沈破を戦果報告で受けておりますが、これらの数は多少前後するでしょう。航空機は撃破300機を報告しています。飛行場は使えなくなったと見て間違いないでしょう。」
「分かった。やはり空母はいなかったか。では航空参謀、今後の作戦に意見はあるか?」
南雲は航空参謀の鳩羽に尋ねた。ハワイ作戦は無線封鎖で行なわれるため、2度の攻撃の後の行動は旗艦赤城の司令に任せられていた。
「帰還した攻撃隊にすぐに対艦兵装を着け待機させるべきです。同時にハワイの南の方向にも索敵機を出し、敵空母を攻撃します」
そこへ参謀の加崎が反論した。
「太平洋に展開してる敵空母はエンタープライズ、レキシントン、サラトガと情報がありますがこのうちレキシントン級一隻はサンティエゴのドッグで修理を受けているそうです。恐らく残りの2艦と我が艦隊の位置は、索敵でも見つからないどうり相当離れているはずです。ここはまずハワイを徹底的に叩いてから空母戦を挑むべきだと思います。」
両者の案を南雲が検討している最中に参謀長の草鹿が提案した
「ここは撤退するのもありですがしばらくは防戦に徹するのはどうでしょうか。」
「どういうことだ」
南雲が問う
「米空母が離れているのなら我々が急いでも意味はありません。ならば搭乗員のことも考慮して空母戦に備え休養を取るべきです」
南雲は少々思案したのち、鳩羽の案にすることにした
「残念だが鳩羽の案がもっともだ。敵空母を発見した際に早く攻撃しなければならないし、ハワイの方は2度の攻撃で十分に削いである。至急準備にかかるように」
「司令、なら二航艦だけで第三次攻撃隊を送るのはどうですか」
皆が退席しようとしたとき加崎が南雲に言った。南雲は少し考えてから言った。
「分かった。念のためそうしよう」
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