言問と鳴神 (2)
武士とは
といっても、鳴神は
ただし、その血筋は高貴で、先のいずれかの天子のご
もし噂が本当ならば、本来の血筋上では無位無官はあり得ないのだ。
その
鳴神を一目見れば、通常は
しかし、本人は歯牙に掛けるどころか、一切の噂を気にせず自適に、気ままに過ごしていた。
御所に勤めるといっても侍大将のお
今日は
鳴神は上司の侍大将にはよく懐いていて、呼びかける時は「
習ったとおりに
「……鳴神、ただいま御前にまかりこしました」
これだけは覚えよ、と育ての親に言い聞かされたままの口上を述べる。
重々しく頷いた御大将は、一度御簾を見上げてから改めて鳴神の方へ向き直った。
「うむ、今度は主上たっての命でな。お前には、
「……はっ、大江の鬼……ですか?」
基本が人々に
なんなら大江がどこに当たるかも知らず、思わず顔を上げた鳴神に、御大将は噛んで含めるよう丁寧な説明をした。
「都から北西にある大江山に鬼の
「は……。その山に行けば、鬼の里などがある、という事でしょうか」
「いや、山頂に岩屋があるという話だ。そこを拠点に動いていると、地の猟師に確認させた。
「なるほど……。我が血なら鬼気に当てられぬと」
御大将が重々しく頷く。
「それもある。だが、一騎当千の
「はっ」
再び
「主上よりの命だ、討伐した鬼の首か腕かを持ち帰れと」
「かしこまりました」
鳴神は体躯に似合わぬしずしずとした動きで、ゆっくりと御前を去った。
御大将は直属の上司であり、打ち合いの相手などもしてくれる、鳴神にとっては楽しい相手ではあるが、ああいう場はどうも重苦しくなり肩がこる。
「さて、今日の用は済んだ。
天子の御座所から離れれば離れるほど、心も軽くなる。
弾むような足取りで、御所を北へと進む鳴神の姿も声も気にするものはもういなかった。
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