第7話 旅人の娯楽

 その旅人は娯楽を求めて旅をしていた。といっても彼の娯楽というのは食事である。

「うーん、美味い。ごちそうさま」

 彼はありとあらゆるごちそうのためならば、たとえ火の中水の中。あらゆる場所に訪れた。そして、彼の手記にはそのごちそうの評価が書かれていた。

 時にめちゃくちゃ辛い料理を食べて”まるで口から火を噴くような料理”と書き記し、時にその甘さと瑞々しさの果実に”甘さと滋養を兼ね備えた果実”と書き記した。彼は食べてばっかりの旅をしていたのだ。それが彼の娯楽でもあった。

 いつしか彼の酒気は世に出回り、書かれている料理を食べてみたいと奮起する旅人が大勢現れた。そして、皆が旅へと駆られた。

 彼の最後の手記に書かれている”竜姫が料理した特別な食事”は誰にも理解されなかった。彼は最後に何を食べたのか? それが余計に旅へと駆られる要因となっていた。

 彼はそれを知らずに旅を続ける。後の世に伝説の旅人渡渉されるまで。

 

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400文字ストーリー 永遠在生人 @Zinn818

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