第5話 剣士の道中

 私は剣に生涯を捧げた。素振りをし、剣の術理を考え、己を鍛え、精神集中する。そんな毎日だ。あの日、勇者に出会わなければーー。

「剣士、俺の仲間になってよ」

 勇者は私よりも一回り小さい少年のように思えた。

「なぜ、私がそなたの仲間にならなくてはならない? 私は剣の道に殉死する身だ。寄り道などしていられぬ。他を当たれ」

「皆が認めている。君が最強の剣士だって。だから、君と旅をして、俺に剣を教えよ」

 勇者は真っ直ぐな目で私を見る。

「私以外にも強い剣士がいる。そちらに当たれ」

「今、眼の前にいる。あなたがいいんだ」

 私は真剣な目で見る勇者に問うた。

「ならば、そなたの剣で何をしたいのか、言ってみよ」

「俺は世界を本当の意味で、平和にしたい。勇者の悪習もきっぱりと断ち切る。本当の平和を導来たいのだ」

 魔王決戦時。

 私は勇者の背中を守るために剣を振るった。誰かのために剣を振るう。そんな剣の道もまたありだな、と。

 吶喊吶喊吶喊。

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