第4話 憎悪の始点

 その日は晴天で雲一つない青空だった。

「兄ちゃん、遊んでよ」

「分かったよ、弟よ」

 兄は12歳、弟は6歳。弟は兄の後をよたよたと歩く。二人はとても仲が良い兄弟だ。

「勇者だ! 勇者が来たぞ!」

 兄弟はその声を聞いた瞬間、逃げる準備をした。勇者。人間族に突如現れる特別な人間。一般の人間の1000倍の膂力を備え、我ら魔族の同胞を鏖殺する。例外もなく殺す。兄は言った。

「すぐに逃げるぞ、弟」

「お父さんとお母さんは? 一緒に逃げようよ!」

「お父さんとお母さんはもう避難している。大丈夫だから」

 兄の手を握り、弟は必死について行く。

 その頃。

 村の同胞は勇者と戦った。だが、戦力差は明白だった。兄弟は森に隠れた。勇者一行は兄弟の父と母と同胞の生首を持ち帰った。兄は泣き叫ぶ弟の口を塞いだ。勇者一行が去り、二人はからくも去り、隣の魔族村まで逃げていった。後に、魔王の四天王となる二人はまだあのときに抱いた憎悪を根付かせている。

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