第2話 月


 暗い夜空を眺めていると、東の空からお月さまが「僕のとこへ遊びにおいで」とはしごを伸ばしてやってきたから、ぼくははしごに足をかけ、一段目でワクワクして、五段目で僕の背よりも高くなって、十段目には見たことのない景色が見えて、百段目にはおうちなんかこえちゃって、二百段目には風が吹いて、三百五十段目には鳥が邪魔してきたけれど、それでもぼくは諦めずに、一生懸命のぼったから、とうとうお月さまの顔の前まで、登り切ることができて、お月さまに「こんばんは」と挨拶して、お月さまも「こんばんは」と言ってくれて、お月さまがぼくを顔の中まで案内しようとしてくれたんだけど……ハツカネズミがやってきて、バリバリバリって、お月さまを食べちゃったから、お月さまは消えちゃって、残ったのははしごの上でおどろいた顔をしているぼくと、お腹いっぱいって言いながらお腹をポンポン叩くハツカネズミがいるだけで、鳥さんたちも来てくれなくて、「なんでお月さまを食べちゃったの」とぼくはカンカンになってハツカネズミに言ったのだけど、ハツカネズミは「カステラみたいで美味しそうなお月さまがいたからだ」って、ひどいことを言ったから、ぼくはパッとはしごから手をはなして、ハツカネズミに飛びかかって「お月さまをかえせ!」って、大声を上げたらハツカネズミがびっくりしちゃって、ハツカネズミは空をとぶ魔法がきれて、ぼくらはみるみるうちに下に落ちていって、風がビュービュー、鳥がキャーキャー、耳元で騒ぐんだけど、誰も助けてくれなくて、とうとう地面へ落ちるってところで、ぼくがいないと気付いたパパとママが、ぼくを抱きしめ助けてくれて、ぼくはパパとママの腕の中、ふんわりとしたお日さまの匂いとすっとするお月さまの匂いがして、ああパパとママの匂いがするとぼくは二人を抱きしめて、三人で一緒に寝ようと誘ったら、パパとママはニッコリ笑って頷いて、ぼくをベッドまで連れていって、こうしてぼくはパパとママと一緒になかよくしあわせなゆめを見にいきました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

一文が長いお話し 良夜すぐる @lentant

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ