一文が長いお話し

良夜すぐる

第1話 一文が長い小説

 一文が長い長い文章は、正直に言うと目が滑りやすく、また疲れ目にもなりやすいのであまり読みたくないのですが、そうは問屋がおろさないとネット上で何故か長い一文小説チャレンジなるものが流行りまして、皆ことごとく一文の長い小説を書き始めたのでありますが、まずこんな珍妙な事をしでかそうとする人物は、頭そのものが珍妙で、なんなら小説の内容ももとから荒唐無稽なナンセンスなものばかり書いているような人たちばかりで、トンチンカンな内容の小説をトンチンカンな文章でハチャメチャに長く書こうとしますから、まあ本当になんでこんなものが大流行しているのか、私もわからず首をかしげるばかりでして、一体どこのどいつがこんな遊びを考えたのかとひたすら考え、その元を探しているところで――まあつい先日見つけたんですけど――多くの長文作品を読んだのですが、読めば読むほど皆様のもがきようと言いますか、長い一文を少しでも読みやすくしようとするために、何やら五七五の俳句調にしてみたり、読点を多くつけたり、括弧や傍線を入れるなどして様々な工夫を凝らしていることに気が付きまして「その工夫をどうして普通の小説でやらなかったのか」といささか憤懣やる方ない気持ちで眺めているの半分、「人は真面目にふざけているときが一番頭が働く生き物かもしれない」と感心の気持ち半分が、脳と胸の間を行ったり来たりして私の具合が悪くなりそうで、もうこうなったら私も彼らにならって長い長い一文の文章を一息に書いてやろうと言う気持ちで今筆をとっているという次第でして――――ええ、バカなことをしていると自分でも思っているところは大変あるのですが――どうしてもやらずにはいられないといいますか、何かに取り憑かれたような、酒に酔っ払っているような感覚で、ついつい書いてしまったのですよね。

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