第3話
「あ、そうだ……私鍵を忘れて…」
おばけが渡してくれた鍵を受け取って、ようやく本来の目的を思い出す。
初の夜の学校だったり、そこで喋るお化けと出会ったりで忘れかけていた。
「君ならここに来てくれると思ってたよ」
「……え?それは、どういう」
「神様は本当にいるんだよ。こんな事起こっていいはずがない。って考えたら、もしかしたら悪魔の仕業かも?」
光を宿さない真っ黒な瞳が、私を射抜く。
「私は、君のことを知っている。」
何を言い出すかと思えば、私を知っている?
でも私はこのお化けの事を見たことがないし、心当たりもない。
訳も分からずあっけらかんとしていると、お化けが私の手をふわりと、優しく引いた。
「ねえ、少し話そうよ」
「望月 玲ちゃん、で合ってるよね?」
「私の名前、どこで知ったんですか。」
「え〜?どこだろう。君が先生や友達に名前を呼ばれているところは見たことが無いからなあ。なんとなく?お化けの勘はよく当たるよ。」
「は、はぁ………」
正直言って、普通に怖い。光の粒すら見当たらない、この世界の闇をそのまま映し出したかのような瞳。生気を全く感じず、血色感もほぼない真っ白な肌。そして謎に動きまくる表情筋。
本当にお化け、なんだよな。
「あの、貴方はほんとうに…」
「だからそう言ってんじゃん。ほれ、ほれ。」
私の体の中に白い手を突っ込み、そしてぐるぐると回す。
それに思わず、ひぃ……と声が漏れる。手がすり抜ける事で自分がお化けなのを証明しようとしているんだろうが、このありえない状況に脳がエラーを起こし、今にも口から何か出そうである。
「あと、私のことは………そうだな、"るい"って呼んでよ。」
「るい、さん?」
「うん。これから長い付き合いになるだろうし。」
今日限りでも十分お腹いっぱいなんだけどな…
ゼロの世界 白野 @Shirono_029
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