第5話 奇妙な話②

———【現在】


 ダヴィは過去の事を思い出すと輝く星から目を逸らす。そして、エトナ少年から聞いた奇妙な真相を確かめる為にダンジョンへと向かう。


 冒険者ギルドからそう遠くない場所にあるダンジョンへ辿り着くと階段を下る。ダヴィは半年振りにダンジョンの中へと入っていく。


 階段をひたすら下り続けていると壁に地下21層と文字が書かれ横にずれ奥に長い部屋へと入る。


 壁に設置されているたいまつの灯りが宿る中、ダヴィは辺りを見渡しながら歩く。


ダヴィ (モンスターが言葉を話す?そんな事が本当にあるか?)


 半信半疑で道を歩き続けていると、コロンと足で何かを転がした音が聞こえ足元を見る。


ダヴィ (何だ?何か転がした音が聞こえたな)


 足元を確認するが茶色の床には何もなくダヴィは気のせいか…と思い再び歩き出した瞬間だった。


———カチャカチャカチャ


 エトナが話していたような甲冑の鳴る音が聞こえダヴィは剣の取っ手を握ると鞘から抜き背後に振り返る。


ダヴィ 「っっっ!?」


 剣と盾を構え甲冑を着用したボーンナイトが立っていた。


 「な…んで…」


 そう呟くと骨がバラバラに崩れていく。ボーンナイトが防具として着用していた甲冑と手に持っていた剣と盾は床に転がり落ちダヴィは剣を収める。


ダヴィ 「お、お、襲ってこなかった…なんだったんだ?とりあえず、エトナに報告するか」


 ポーチの中を漁ると移動ワープ書が何個か入っている事に気付き取り出しボタンを押す。瞬座に地上にワープし冒険者ギルドへと向かい歩く。


 冒険者ギルドの前に辿り着くと中に入ると、丁度エトナと出くわし立ち止まる。


エトナ 「あれっ!ダヴィさん、帰ってくるの早かったですね!もう見てきたんですか?」


 首を傾けるエトナにダヴィは頷く。


ダヴィ 「あぁ。エトナの言う通り喋るボーンナイトがいたよ」


エトナ 「やっぱり!僕の目は確かだった!」


 エトナの隣にまだ若い歳ごろであろう少女が並んで立ちダヴィは顔を見つめる。


エトナ 「あぁ!隣にいるのはフィーネです!僕と同じような奇妙な体験をしたんです」


 腰に短い杖を装着するフィーネの姿にダヴィは目が釘付けになる。髪色は金髪で瞳は真紅のように赤くフィーネの顔を見つめながらスカーレットの面影を重ねる。


フィーネ 「初めまして。ダヴィ様。私は喋る箱と逢ったんです!」


 ダヴィは我に返りテーブルが設置されている方角に視線を移す。


ダヴィ 「とりあえず席に座ろうか。飲み物でも飲みながら聞こう」


エトナ 「あっ!僕はこれでお暇します!真相を確認できた事だし!ダヴィさん、ありがとうございました!では!フィーネもまたね!」


 エトナは満足気な顔をしながら、ダヴィとフィーネに手を振ると夜道の中、走っていく。


ダヴィ 「じゃあ、フィーネ。席につこうか」


フィーネ 「は、はいっ!!」


 2人はテーブルに着席するとダヴィは店員を呼び止め飲み物を注文する。


ダヴィ 「喋る箱とは?」


フィーナ 「これはつい1週間前の出来事です」


 フィーネは語り始める。


———【1週間前】


 フィーネはダンジョン地下23層へと出向いていた。


フィーネ 「ん?あの箱は———お宝かなっ!?」


 宝箱を見つけたフィーネは目を輝かせると走る。ゴクンっと息を呑み宝箱を開けると中身は何も入っておらず一気に地に落とされた気分で閉じようとすると真っ黒な空の箱から長い舌が飛び出る。


 「お墓に…きてくれない…」


フィーネ 「ひ、ひ、ひ、ひえええええぇぇぇえええ!!」


 話す箱に対し大声で叫ぶとフィーネは顔を真っ青にし無我夢中で走りながら移動ワープ書のボタンを押す。


フィーネ 「は、は、は、な、は、な、話した!箱が人間の言葉を話した!」


 地上にワープしたフィーネは逃げるように冒険者ギルドへと向かう。


————————————————


 フィーネは語り終えるとダヴィの顔を見つめる。


フィーネ 「これが私の体験した話です…」


ダヴィ 「ふむ…。喋るボーンナイトに続いて次は箱か…。聞いた感じだとミミックっぽいがな」


フィーネ 「こ、この耳で実際に聞きました!!」


 フィーネは自分の耳に対し指を差す。


ダヴィ 「そうか…。じゃあ、ちょっくら行ってみるか」


 ダヴィは一気に飲み物を飲み干し立ち上がろうとすると


フィーネ 「ダ、ダヴィさん。噂で聞いたのですが大切な女性がいたとか……」


 ダヴィはもう一度座る。


ダヴィ 「あぁ…。君のように赤い瞳をした魔法使いだった。君は何故、冒険者になったんだ?」


フィーネ 「私の家は没落寸前の男爵家なんです。親がダンジョンで少しでも魔法を磨いて国家魔術師になれと…」


ダヴィ 「そうか…。君も苦労人なんだな」


フィーネ 「えっ…。大切な方もそうなのですか?」


ダヴィ 「あぁ。スカーレットは———」


 ダヴィはフィーネに出来事を語る。

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