第4話 ストーカー
翌日になるとダヴィは背後からつけられている気配を感じながら、再びダンジョンの地下21層に訪れていた。
ボーンナイトと交戦中のダヴィは1メートル先に離れた位置から声援を送るスカーレットの姿があった。
スカーレット 「頑張れ~~!ダヴィ~~~!」
ダヴィ (な、なんかやりにくい…)
黄色い声援が飛び交う中、ダヴィは違和感を覚えながら剣を縦に振ると盾でガードされる。
ボーンナイトは持つ剣でダヴィに向かい攻撃するが、剣を横にしガードする。
互いに剣が交わり鋭い音がダンジョン内に響く。ボーンナイトが持つ盾を弾くと、ダヴィは剣を斜め下の位置で留める。
ダヴィ 「剣の薙ぎ払い!」
剣を斜め上にあげるとボーンナイトの胴体を斬り、着用していた甲冑が床に落ちる。
スカーレット 「キャーーーーー!剣の薙ぎ払い!!なんてかっこいい技なの~~~~!」
ダヴィ (剣術指南書の初級技だぞ…。かっこいいか?)
スカーレットの大きな声がダンジョン内に響く。
ダヴィに対し声援を送っているとスカーレットは何者かの気配を感じ、杖を構える。横目で左右を見渡すと2足歩行でスカーレットを狙うボーンナイトが迫る事に気付き杖から火を纏う。
スカーレット 「テメェ!!スカーレット様の貴重な推し活の邪魔をすんじゃねぇ!!
頭上から大きな火の弾がボーンナイトに向い落下し着弾するした途端、爆発する。
ダヴィ (うわぁぁああ~~。魔法指南書の応用魔法だ~~~。俺の初級技とレベルが違う~~~)
煙が薄っすらと消えていくと着用していた甲冑、剣、盾は魔法の熱でドロドロに溶け、床に骨が転がる。
一撃でボーンナイトを討伐したスカーレットは再び戦闘中のダヴィに声援を送る。
スカーレット 「がんばれダヴィ~~~!」
ダヴィはスカーレットに声援を送られながらボーンナイトを討伐した。
スカーレットと出会い、数か月の時が経った。初めはスカーレットに後をつけられるダヴィだったが今となっては一緒にいるのが当たり前となり、2人はダンジョンでモンスターを狩り終えると街へ向かう。
ダヴィ 「スカーレットは魔法が使えて良いなぁ。俺には武器を振る事しか出来ない…」
スカーレット 「あら、別に良いじゃない。魔法を上手く使いこなすか、武器を上手く使いこなすかの違いだけよ?結局使う人、次第なのよ」
スカーレットの言葉にダヴィの心が動く。
スカーレット 「あっ!あたしの事は丁寧に扱ってね?あたしってこう見えて繊細なの」
赤くなった頬に手を当て、スカーレットは照れる仕草を見せる。街の露店から甘い匂いが漂いダヴィは駆け寄る。
ダヴィ 「おやっさん。クッキー5枚くれよ」
「あいよ。ダヴィ、近頃隣にいる若いお嬢さんと一緒に歩いている所を見掛けるが、ついに結婚したのか?綺麗な嫁さんだな」
露店の男性の言葉にスカーレットは頬を赤くし手で抑える。
スカーレット 「キャーーー!やっぱり!やっぱりそう見える!?」
「あぁ。お嬢さん、歳はいくつだい?」
問われたスカーレットは、きりっとした顔立ちに一変に胸に手を当てる。
スカーレット 「私は20歳です!」
「おい、ダヴィ。随分若い嫁さん貰ったんじゃないか?年の差婚ってやつだ!」
スカーレット 「そう私は若くて綺麗で何でも出来ちゃうダヴィの妻(自称)です」
ダヴィは親指を立てるとスカーレットにクイッと指す。
ダヴィ 「いや。こいつは只のストーカーだ」
ダヴィにストーカー扱いされ、スカーレットは肩を落としながら木陰に移動し杖を地面に置くと屈み込む。
如何にも落ち込んでいるスカーレットの姿に露店の男性は苦笑しながらクッキーを袋に詰める。
「なんだ、結婚してないのか。もう、お前も良い年なんだ。亡くなった親御さんの為にも結婚して幸せになれよ」
ダヴィ 「へいへ~い」
クッキーの入った袋を受け取るとダヴィは背中を見せ腕を大きく振る。屈み顔を腕で隠すスカーレットの肩をダヴィは優しく叩く。
ダヴィ 「スカーレット」
スカーレット 「何よ…どうせあたしはストーカーよ」
ダヴィ 「ちょっとこっち向いてみ」
腕で隠していた顔をあげるとスカーレットは背後にいるダヴィの方へ振り返る。
ダヴィ 「はい。クッキー」
唇にクッキーを当てられスカーレットはひとかじりすると口元を手で覆いモグモグと噛む。
スカーレット 「な、な、な、な、なにこれ~~~!凄い美味しいよ~!ダヴィ!」
美味しさの余りにスカーレットは目をキラキラと輝かせる。
ダヴィ 「だろ?ってか初めて食べたのか?」
スカーレット 「う、うん…。こういうの食べた事ない…」
スカーレットの顔が曇る。ダヴィは再び、スカーレットの唇にクッキーをつんつんと当てる。
ダヴィ 「んじゃ半分こして一緒に食べよう。5枚あるからとりあえず1人2枚な」
スカーレットはダヴィに突き出されたクッキーをはむっとかじりつき頷く。
スカーレット 「ふぁりがとう」
スカーレットはもぐもぐとしながらダヴィからクッキーをもう一枚受け取る。
ダヴィ 「スカーレットは20歳だったのか」
スカーレットはもぐもぐとしていたクッキーを喉に通すと頷く。
スカーレット 「うん。もっと若いと思った?安心して。いつでも結婚出来る年だから」
ダヴィ (化粧が濃くて20代後半だと思ったとか言えねぇ…)
2人は手に持っていたクッキーを食べると、ダヴィは袋から最後のクッキーを取り出す。
ダヴィ 「最後は半分こな」
ダヴィが半分にクッキーを割ろうとするがスカーレットは阻止しようと手首を強く握る。
ダヴィ 「イテテテテ!なんだよ!やっぱり1枚まるごとほしいのか?」
スカーレット 「ううん!クッキーゲームしよう!男女が端っこを互いにかじりあって最後にはキスを…キャーーーー!!」
スカーレットは妄想し真っ赤な顔を手で覆うとダヴィは最後のクッキーを1枚丸々、口の中へ放り込む。
ダヴィ 「うん。おいひ~」
ぼりぼりと噛む音が聞こえスカーレットはダヴィの顔を見つめる。モグモグと頬張るダヴィの手にクッキーはあたかたも無く消えていた。
スカーレット 「食べちゃったの!?もうっ!折角のキスチャンス逃した!」
ダヴィ 「まだ婚約者…いや恋人でも無いのにキスなんて急すぎるだろ」
ダヴィの何気ない一言にスカーレットの胸がチクリとし胸元に手を当てる。
スカーレット 「そう…だよね。ごめんね急に。あたし、もう帰るね」
スカーレットは地面に置いていた杖を拾うと逃げるように家へと帰っていった。
ダヴィ 「は~~~。スカーレットの気持ちを知っておきながら言い過ぎたな」
ダヴィは袋をくしゃっと握ると天を仰ぎ目を閉じる。
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