第5話 天使たち

先ほどまで眩しい程に輝いていた月も、すぐに雲に覆われ闇の中にその姿を消した。


と、ルミコが歩いていたその路地の一角に建つビルの屋上に零呼とミカ、その二人の姿があった。


その体付きに釣り合わぬダブダブな真紅の衣装を着た一見すると赤ずきんちゃんのコスプレをした幼女と白いメイド服を身に纏い、やはり白くその中央には赤十字マークの付いている救急箱を手にしたピンクの髪の赤ずきんちゃんよりは明らかに年上に見える少女。

その二人が路地を行く、ルミコを見下ろしていた。


その時、不意に白衣の少女が口を開き、赤ずきんちゃんに向かい


「あの娘ですね。」


そう言って尋ねた。


それを聞いた赤ずきんちゃん、零呼はその問いに暫く押し黙っていたが、


「そう、あの娘。今は黒き者の傀儡、操り人形になっている……悲しい娘」


と、白衣の少女に振り向く事も無く返してきた。


零呼、そんな幼女は見た目通りに、まだあどけの無い、丸く済んだ目を持つ愛らしい顔をしていた、だが、その表情は何処かに影があり、変化の無い冷たく悲しい雰囲気を漂わせていた。


白衣の少女、ミカはそんな零呼の横顔を見ると、零呼が言ったルミコの事に対してか、それとも零呼のそんな機械的な姿に対してなのか、とにかくその顔を曇らせながら。


「魔族の仕業ですね……」


そう言いながら、その視線の先を零呼から路地をひとり歩くルミコへと変えた。



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