第33話

 前に薬の作成ばかりでその症状を診る事ができなかった俺はアークリーにお願いして猛勉強した。だからルークの症状から魔物が持つ特殊な菌に汚染されたものだと分かる事ができたのだ。


「毒ってことか⁉︎」


「そんな⁉︎」


 タイラーとマリルの悲痛な声が重なった。


 魔物の感染症はかなり厄介なものだとアークリーから聞いていた。その毒を持つのは一部の魔物らしい。放っておくと数時間で死に至ることから魔物を狩る人達からかなり恐れられていると言っていた。


「アークリー」


 皆に聞こえないような小さい声でアークリーを呼ぶ、まだ魔物の感染症を治す薬は作った事がないからだ。


(何やら緊迫した雰囲気じゃな……)


 俺はアークリーに紫の斑点を見せた。


(なるほどな……紫の斑点はあの魔物の感染症か、かなり珍しい奴に噛まれたようじゃの)


 さすがアークリー。これを見ただけで全てを理解するなんて俺にはまだまだ手の届かない領域だ。


(よし、持っている薬草を見せてくれ)


 皆が黙って見守る中、俺は持ってきていた薬草を並べるとアークリーに言われた通りに選んで薬を作り始めた。


 薬を作る手順はかなり複雑だった。配合量は細かく薬草の種類も多いのに混ぜる順番が決まっているのだ。一つでもそれを間違えると最初からになると言われて俺は緊張を保ちつつ慎重かつ迅速に作業をした。ルークを死なせる訳にはいかないと重いプレッシャーを受けながら。


 それから一時間くらい経った頃、薬が完成する事ができた。早速薬をルークに飲ませると苦渋に満ちた顔が穏やかな顔に変わりスースーと寝息を立て始めたのを見て心からホッとした。


「……これで大丈夫です」


 皆は俺の作業を固唾を飲んで見守っていたらしく、俺の声に周りから脱力するような深いため息が溢れた。


「凄い……セイナちゃんて凄腕の薬師だったんだね!」


「ああ〜 良かった〜」


「まさか魔物の感染症をすぐに治しちまうなんて初めて聞いたぜ!」


「先生からは魔物の感染症は死んでしまうか後遺症で二度と戦えない体になるって聞いてたからあの時は血の気が引いたわ」


 周りは今まで黙っていた分矢継ぎ早に話始めるとその場は活気立つ。


「でも、これは凄い事だぞ! セイナさんがいれば戦士団から脱退者が相当減るからな!」


 タイラーの言葉にそうだと皆の興奮が止まらない。


「確かに! これなら感染症を気にしないで積極的に魔物と戦う事ができるわ!」


「これは大発見だよセイナさん!」


 マリルとワイスは更に興奮気味になって騒ぎ始めた。


「あの、ルークさんが起きてしまいますよ」


「「「あ……」」」


 俺の言葉に戦士団のメンバーは途端に慌てて口を押さえて黙った。


「俺、洞窟の入り口に煙を立てておくよ」


 皆が落ち着いた所でタイラーが洞窟の入り口に歩いていった。


 そして煙を立ててから数時間後に俺達は無事教師と戦士団で構成された救助隊に助けられたのだった。


 俺達が出発前に集合していた場所に連れられて行くと多くのテントが張られていて戦士団の人と思われる人達が沢山動いていた。


 そこにはルークと同じく感染症で苦しんでいる生徒がかなりいると聞くと俺は薬を作った。そしてその薬が全ての人に行き渡った時にはすでに夜になっていた。


 当然その薬の存在に周りにいた戦士団の人にかなり驚かれた。そして帰る時には戦士団の団長と呼ばれる人に明日話があると言われ俺は解放されたのだった。


 フェルナと暗くなった道を歩いていた。


 なんだか今日一日が凄く大変だったな……


「セイナって本当に不思議な人ね」


 急にフェルナからそう言われて彼女を見ると微笑んで俺を見ていた。


「なんだかこの世界の人じゃないみたい……」


 いきなり核心のついた言葉に思わず立ち止まってしまう。


「え……」


「だってなんでもできるし、他の人と考え方が違うからなんとなくね」


「そ、そんな事ないよ!」


 変に動揺しながら否定した事で彼女は笑っている。


「ふふ、冗談よ」


 彼女は一体何を考えているのだろうか……その笑みが何を意味しているのか全く分からなかった。


 自分だって変わってるって言ってたくせに……


  俺はなんだか揶揄われているような気分にそう心の中で呟いていた。


「ただいま帰りました」


 家に帰ると自然と元気が出てくる。まだ1日しか経っていないのに懐かしささえ感じてしまうのは何故だろう?


「セイナちゃん!」


 家のドアが勢いよく開かれるとエリアさんにギュッと抱きしめられた。


「良かった……学校から連絡があって心配してたのよ」


「心配をかけてしまってすいません。この通り私達は大丈夫です」


 エリアさんの震える声に俺は泣きそうになってしまった。こんなにも俺の事を思ってくれているのが嬉しかった。


「フェルナちゃんも元気そうで良かったわ」


「早くお母さんに元気な姿を見せてくるといい」


 カリスさんも出迎えてくれていた。


「はい、ありがとうございます」


 フェルナも俺同様家族のように心配されて嬉しそうだった。


「さあ、中に入ろう。セイナ君達も疲れているだろうから」


 カリスさんが気を遣ってくれると俺達は中に入っていった。


「今温かいご飯を用意するから待っててね」


 エリアさんは俺から離れると家の奥に消えていった。


 温かいご飯を食べながらカリスさんとエリアさんに話を聞かせ、寝床についた俺はすぐに寝てしまったのだった。



 次の日は学校に行くと沢山の人から感謝をされた。昨日感染症に倒れた人達だった。


 昨日の出来事は街でもかなり話題になっていたみたいで、その中心は魔物が出た事よりも俺が感染症を治した事だった。


 やっと教室に辿り着いたのも束の間、先生に呼ばれてしまい、休む暇もなく教室を出ていった。


「失礼します」


 一体何を訊かれるのか少し心配になりながら中に入ると3人の大人が俺を待っていたのだった。

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