第12話
「さて、アークリー!」
(ホイっと! 何か用かな?)
俺が裏で色々動いた結果村の食べ物に関してはかなり改善されてきていた。作物を植える土は栄養を存分に蓄えているからそこで採れた野菜は美味しいし、それを食べている家畜もよく育って美味しい乳や肉に変わる。
それに俺がカーストを山で見つけたと父さんに持ちかけると村の畑の一角に植えられる事になったのだ。昔だと考えられないような美味しい食事が毎日食べられて満足している。
だから最近俺の目には服や家が気になり始めていた。ボロボロの服や木でできた脆そうな家をどうにかできないかアークリーに相談する事にしたのだ。
「何か良い方法ある?」
俺の話を聞いたアークリーの答えは意外なものだった。
(それならドーラ族を呼んではどうじゃ?)
「ドーラ族?」
(説明しよう。ドーラ族とは手先が器用な種族でな、この世界の服や建物のほとんどがドーラ族によって作られておるのじゃ)
「それは凄いね。でも、こんなところに来てくれるかな」
(ふふふ、安心せい。策があるでな)
アークリーの策は彼らの好物をこの山に植えれば絶対にくるという事だった。
(ドーラ族はカラムの実が大の好物なのじゃ。その実はかなり希少で栽培が難しい木から数えるくらいしかならない。だからドーラ族はカラムの実を求めて世界を旅しているのじゃ)
「そんなに美味しいんだ! カラムの実って!」
これは是非食べてみたい。
(ホッホッホ! 残念じゃったな。あれは普通の者が食べたら不味くて吐き出すほどなんじゃよ)
「そうなんだ。味覚が全然違うのかな……」
(ドーラ族は人とは違う生物だからの。普段は木の実を食べとる)
「よし、それならこの山に植えようよ。でも、難しいんでしょ? うまくできるかな」
(わしも一時期興味があってかなり研究していた事があってな。そこからはじき出された答えは土と水だったのじゃ)
「詳しく教えて」
(まずは水じゃがこれは問題ない。この山は水が良質だからの。もう一つが難しいとされている問題じゃ)
「土だっけ」
(そう、カラムの木は相当の栄養が必要とするから土の栄養が足りないとすぐに枯れてしまうのだ。未だに希少と言われる所以じゃな。あれを維持するのは不可能だと言われておる)
「それじゃあドーラ族の人達は常に旅をしている感じなんだね」
(そうじゃな。彼らはカラムの実の味を忘れられないのだろう。だからドーラ族はカラムの実に異常と言えるほど執着しているのじゃ)
「確かにそれがこの山にあれば来そうだね」
(薬草から作るカラムの木に合う栄養はかなり複雑な配合が必要じゃ。だからわしはそれを完成させたはいいがあまりに継続が困難だと発表を辞めてしまった。しかし、こんなに恵まれた環境なら枯れることなく育てられよう)
「それじゃあ一本の木でも手一杯になりそうだね」
(そうじゃな、カラムの木があった場所はしばらく草木が生えないと言われるからの)
「で、その木はどこにあるのかな?」
(こればっかりは探さないといかんな。特徴は知っておるからある程度は絞れるはずじゃ)
「どこまでも探すよ」
(カラムの木は人が住む場所には無いと思っていい。あったとしても実は取り尽くされているだろう)
「じゃあ人がいけないような場所を探せばいいって事だね」
(それでいて豊富な土地じゃないと育たんからな。幾つかそんな場所を知っとるから行ってみればいい)
「じゃあひとっ飛び行ってきますか!」
アークリーの案内を頼りに海を渡り山を超えた。カラムの実はその希少性から赤い宝玉と言われているらしい。かなり高い金額で取引されていると道中話を聞いた。
そして探す事数時間、ひたすら森が続く場所を低飛空で進んでいるとアークリーの言っていたカラムの木に似た特徴をした実のなる木が視界に入った。
「これってもしかして!」
(そうじゃ、これがカラムの木だ)
手でちょうど掴めるくらいの赤くて美味しそうな実が5個、俺の背より2つ分高い木にぶら下がっていた。
「思ってたより大きくないんだね」
(ここは人が来るのは困難な場所じゃから実が落ちてそれが土に栄養を与え、枯れずにいられるのじゃろうな)
「そっか、実が取られちゃうから枯れるのか」
(実は土から吸い出した栄養が凝縮されたものだからな。ほれ、あそこにまだ生えたばかりの木がある。あれを持ち帰って育てればいい)
「この実を2つだけ貰っとこうかな。全部取ったら枯れちゃうもんね」
(お主は本当に優しいのう。普通の人間なら全部持っていったはずじゃ。なんせ巨大な富へ変わるからな)
「別にお金が沢山あってもしょうがないしね、今だって洞窟に有り余ってるんだからさ」
俺は5つのうち2つをもぎ取ると小さな木と一緒に持ち帰る事にした。
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