異世界知事 第3話

 エレノアが次々と獲物を捕まえてくるので、それを食べた私は劇的に治りが速くなり、ついに起き上がって動けるようにまでなった。



「あら、サイトウさん、元気になりましたのね。よかったですわ」



「ああ、このとおりだ、ありがとうシスターライラ」



 こんな辺境にもある教会。

 そこでシスターをしている年若いライラは人を救うことを目指していたが、落ちこぼれとされここに派遣されてきていた。

 私が寝込んでいる間、エレノアが家を空けているときは彼女が私の世話をしにきてくれていた。



「シスターライラ、非常に言いにくいことであるのだが……」



「どうしました、サイトウさん?」



「あなたは火の魔法が得意なようだ。癒しの魔法は、その、あまり向いていない。もちろん、シスターライラの立派な志は知っているのだが」



「まさか、そんなことが。えいっ、『ファイアボール』!!」



 シスターライラの手から人の顔くらいの大きさの火の玉が現れる。



「私にこんなことができたなんて…… サイトウさん、貴方はいったい?」



「私には【知事】というスキルがあるらしい。おそらく人の得意なものを見抜けるようだ。エレノアに狩人が向いている、と助言したらそのとおり彼女は弓の扱いが得意だった」



「ああ、それで狩人のザンクさんがエレノアさんに『もう教えることがない……エレノアは化け物だ』とへこんでいたのですね」



「そんなことにまでなってたのか……」



「これはすごいことですよ!! サイトウさん、ぜひみんなを救うためその才能を活かしましょう。みんなの得意なことを見抜いて教えてあげましょう!!」



「ああ、わかったわかった。わかったからそんなに近付くな。年頃の娘が男性に不用意に近付いてはいけない」



 自分の娘と同じくらいの若い女の子だ、距離感は大切にしなければな。



◇◇◇



「狩人より畑仕事が向いているぞ」

「あなたは大工仕事が得意なようだ」

「剣より槍が向いている」

「細工師の適性があるな」

「商売をしたほうがよいと思う」


……………



 次々と村のみんなに【知事】で見えた適性を伝えていくサイトウ。

 最初は半信半疑だったが、シスターライラの説得や、エレノアという実例を見た者たちはサイトウの言うことを試していった。



 そして、水を得た魚のように生き生きとする村人たち。

 誰もが自分の能力を最大限に発揮し、辺境の村はにわかに活気づいていった。



 やがてその噂を聞きつけた者がこのホンニーの村にやってきて、サイトウに自分の向き不向きを聞く。

 そうして自分の才能を開花させていく。

 人生が充実していく者たちはみなサイトウに感謝した。



 そして、いつしかサイトウはそのスキル名から知事、と呼ばれるようになった。

 村長や領主様、ではなく。

 ホンニー村の知事だ。



 そして一年が経った。



◇◇◇◇◇◇

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