異世界知事 第2話

「サイトウおじさん、ステータスってわかる? 頭の中で念じてみて?」



(ステータス…… これは、スキル【知事】? なんだこれは?)



「スキル【知事】と浮かんできたぞ、なんなんだこれは」



「すごいね、サイトウおじさん! それはね、持って生まれた才能のことだよ。スキルを持ってる人は滅多にいないんだ」



 才能? 知事とは才能なのか?


 

 ぐぅぅぅぅぅ。



「あ、待っててサイトウおじさん。おかゆ持ってくるから」



◇◇◇



 少女が持ってきたのは、おかゆ。

 なのだが、おそろしく量が少なく肝心の米もスカスカだ。

 


「ごめんね、あんまり収獲できてなくてね、そんなにあげられないんだ」



 あらためて少女を見る。

 顔立ちは悪くないが、頬はこけている。

 着ている服もボロボロだ。



「どういうつもりだ? 誰かに施しをする余裕なんかあるのか?」



「……ないよ。でもほっとけないんだ。貧しいからこそ助け合わなきゃ。さあサイトウおじさん、もう少し寝てなよ」



「くっ。こんな子どもに気を遣われるなど」



「子どもじゃないよ! 私これでも18歳なんだから」



 少女はない胸を張って若干怒りながら答えた。



 ばかな。どう見ても10歳かそこらだ。

 これが目覚めてから一番驚いたことだった。

 成長期に栄養が足りなかったのだろう。

 そんな子どもが見も知らぬ行き倒れた中年の男の世話をしている。



 絶対にここは日本ではない。

 それだけはわかった。



◇◇◇



「エレノア、何をしてるんだ?」



「ん、草鞋を編んでいるのよ。たまに来る行商の人に買ってもらうの」



 まだ治りきっていない私は横になりながらエレノアを見る。

 不思議なことに、エレノアにそれは向いていないと分かった。



「エレノア、それはお前には向いていないぞ」



「え? じゃあ何が向いているの?」



「それは……狩人だ。弓の扱いが上手いはずだ」



「弓なんかやったことないよ」



「それは、もったいない。ほとんど百発百中の腕のはずだ。私にはわかる。ん、なぜだ?」



 どうしてそんなことがわかるのか。

 これがわからない。



「もしかしてサイトウおじさんのスキル【チジ】なんじゃない? チジってどういう意味なの?」



「あー……難しいな。ある一帯を治める偉い人だ。人にあれこれ指示したり命令したりする」



「そっか。領主様、ってことなんだね?」



「……そうだな。領主か。おそらくそれだ。この村に領主はいないのか?」



「いないよ。貧しくて納めるものがほとんどないから。みんな生きるだけで精一杯。治めるだけ無駄なんだと思う」



◇◇◇



「見て、サイトウおじさん!! 私、ウサギを射抜いて捕ってきたんだ!!」



「ほう、やるじゃないか。私の言った通りだろう? エレノアには狩人が向いている、と」



「この村の狩人のザンクから弓矢を試しに借りたんだけど、一回目で命中したの! ザンクが驚いてた!」



 そうか。それはよかった。



「サイトウおじさん、いっぱい捕ってくるから早く元気になってね!」 



◇◇◇◇◇◇

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