異世界知事
気まぐれ
異世界知事 第1話
「西藤知事に対するリコールが成立しました!! 知事職から追放です!!」
数々の文春砲を浴びせられ、テレビでも大々的に取り上げられ、SNSでは#おねだり知事、などと拡散されまくり、とうとう西藤知事は職を失うに至った。
「なぜだ……!? 私は天下のT大法学部卒、そして史上最年少で知事になったというのに! 妻は現役グラビアアイドル、父は元総理、母は元国民的アイドルのハイパーサラブレッドだぞっ、くそっ、くそっ!!」
◇◇◇
「ようやく外出できる……。久しぶりのコンビニだ……」
連日のマスコミ報道により外出もままならなかったが、数ヶ月もするとマスコミは次のネタに食いついた。
いつまでも閉じこもっていてはいけないと、近くのコンビニに向かう。
「ようやく出てきたなっ! 貴様に明日の朝日は拝ませねえ! ⚪︎ねぇ、サイトォォォォォォ!」
側道から突如でてきた男はナイフを構え西藤に突撃してきた。
突然のことに対応できず、腹部に鈍くて熱い痛みを感じる。
「なんだこれは……」
お腹を押さえながら膝をつき、崩れ倒れる西藤。
何とか顔を上げると、そこには脂ぎった老年に差し掛かろうとする男の顔が見えた。
見覚えがある。
確か県庁職員の天下りを禁止すると発表したときに猛反対していた定年直前の職員だったか。
「思い知ったか!! お前が天下りを禁止したせいで私の老後計画が崩れたんだ! それを当てにしていた女房は私と離婚した! 全てお前が悪い、私の人生を壊したお前がなあっ!」
通行人が状況を理解して悲鳴をあげる。
誰かが通報したのか、やがてパトカーや救急車のサイレンが聞こえてきた。
まもなく、西藤の意識は闇に沈んでいった。
◇◇◇
「……ここは? うっ、お腹が痛い……。確か私は刺されて……」
救急車が間に合って助かったのか?
しかし目を開けるとそこは穴のあいたボロボロの天井。
寝かされているベッドはものすごく硬い。
「あ、やっと気がついた! 大丈夫、おじさん?」
小さい女の子が声をかけてきた。
お、おじさん……。
だがアラフォーなのだからそのとおりだ。
「ここは……?」
「ここはね、ホンニー村だよ。おじさん、村の外れで血だらけで倒れていたんだよ」
「ホンニー村? 日本にそんな村があったか?」
「ニホン? 違うよ、アルカディア王国の最辺境の村、ホンニー村だって。記憶もないの? かわいそうなおじさん……よほどひどい目にあったのね」
参った、話が通じない。
言葉は通じているのに。
「アルカディア王国? そんな国が国連に加盟していたか? 訳がわからん。おい、えーと……」
「私はエレノアよ。あなたは?」
「サイトウ、だ」
目の前の女の子はどうみても日本人ではない。
「サイトウおじさん、ステータスってある? 頭の中で念じてみて?」
ん? この子はゲーマーなのか?
にしても電気とかあるように見えんが。
とりあえず、言われたとおり念じてみようか。
(ステータス…… これは、スキル【知事】? なんだこれは?)
◇◇◇◇◇◇
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