正しさと矛盾

優先席

　僕は正しさを振りかざす奴ってのが、嫌いだ。

　電車の中には、優先席がある。僕はその席に座っていた。その時、20代前半くらいの若い男に声をかけられた。

「あの、そこのおじいさんに席を譲ってあげてください」

　最初はなぜ？と思った。だが、ここが優先席だからかと気付いた。

　仕方なく、僕は席を譲ってあげた。何か、言われるのが、嫌だったから。

　僕に席を譲らせた男は満足気な表情をして、立っていた。

　僕は、居心地が悪くなり、次の駅で降りた。

　僕はこういうとき思う。僕がもし、具合が悪かったりしたらどうだろうか？

　外からでは、具合が悪いことなんて分からないし、男は優先席は優先すべき人に譲るべきだと言う善意からなのからだろうが、こちらにしたらいい迷惑だ。

　時に正しさは矛盾に満ちている。

終わり