　道を歩いていた私のそばに、後ろから石ころが勢いよく転がってきた。

　恐る恐る振り返ると、十歳くらいの女の子が私に申し訳なさそうに頭を下げた。

　びっくりしたけれど、よかった。わざとじゃなく、誤ってこっちのほうへ蹴っちゃったんだな。

　大丈夫だよという気持ちを込めて笑顔でおじぎを返すと、そのコはまた礼をして、私から離れる方向に走り去っていった。

　懐かしいな。私も、今のコくらいの頃、学校の帰りによく石ころを蹴っていっていた。それを目にした同級生の男の子が「女のくせに」と言ったのを覚えているが、今は女子サッカーがメジャーになったから珍しくないのかな？　そんな格別活発という雰囲気のコでもなかったし。

　私にもし娘がいたら、あんな感じだったのかな……。

　今のコ、カバンを持っていて、塾の行きか帰りって様子だったけど、ほんと入試をなくせば、純粋に学ぶ目的じゃなくて、受験勉強のコツやノウハウが要るだろうと思って塾通いをしているコが行かなくてよくなるしさ。夫婦が子どもを産むのを控える理由の多くは教育にお金がかかり過ぎることなんだから、学校の勉強をきちんとやりさえすれば、大学卒業まではほぼ確実にできて、その先の進路もだいたい困ることにはならないようにしてあげれば、資格や念のためにやらせておこうという習い事の費用なんかも減らせるし、出生率の向上にも貢献するんじゃないの？　子どもだって、本人が望んでるならともかく、学校で何時間も授業をしてるのに、帰ってからまた勉強や、場合によっては嫌でたまらない習い事を、やらされるのはかわいそうだよ。

　学校や教員サイドにしても、いろいろ忙しいなか、入試の準備や問題の作成なんかを削れるわけだしさ。

　だいたい、受験のための勉強ばかりさせるから、世の中のことに無知や無関心な若者が多くて、選挙の投票率が低いんでしょうが。日本の若者が幼稚で社会性がないとか言うけど、そういう教育をやってるからなんだよ。政治家がいまいち結果を出せないのも、受験の勉強ばっかりしてたからじゃないの？

　あー、腹が立ってきた。たしか新聞に、教育改革みたいなことに関するパブリックコメントが募集されてるって書いてあったよな。パブリックコメントじゃなかったっけ？　とにかく、そんなようなのがあったはずだ。パブリックコメントに意見を送ったことなんてないけど、家に着いたら調べて、今思ったことと内容が合えば、書いてみよう。

　このまままっすぐ帰って、着いたらすぐにだ。じゃないと、後回しにすると絶対にやらなくなっちゃうもんな。

　よし。不足気味の運動にもなるし、ここから速足で行くぞ！