輝美(四十六歳)②

 長ネギだけ外にはみだす、購入したものを入れたスーパーのレジ袋。いつもはマイバッグで、持ってきてなかったから買って久しぶりに手にしたけれど、それを持ち歩いていると、こりゃ主婦だなと思う。私は既婚だから合ってるんだけど、いかにもって意味で。

 そんなに誇れるくらい毎食きちんと料理してるわけじゃないのに、やってますよ感が出ていて、少し恥ずかしい気持ちになる。スーパーは、各食材を置く場所とか、客が買い物をしやすいようにすごく考えてくれているらしいし、私みたいな人たちに真面目に料理をしているよう周囲に思わせてあげるために、長ネギの長さとレジ袋の大きさは良い具合に設計されているんじゃないだろうか? なわけないけど。

 それからスーパーというと、日本で売られている野菜はみんなほぼ同じな形の良いもので、でも本来悪い形のものがあって当たり前だから、それは実に不自然で不気味ですらあって、外国ではそんな光景はほとんど見られなくて、じゃあなんで日本ではそうなのかといえば、消費者がわがままで形が良いものしか購入しないからだ——などという話をいっときテレビなんかでよく耳にして、軽く違和感を覚えたのを思いだす。

 そりゃあ私も、形が良いものと悪いものの二つが単純に目の前にあったら、相当な確率で良いほうを選んで買うだろう。それに、確かに日本の消費者は世界的に見てぜいたくでわがままではあるのだろう。けど、そこまで形の良い悪いにこだわって、良くないものは絶対に買わないと決めているような人はそんなにいないんじゃないの? 実際にやってそうだったというより、日本の消費者は形の悪いものをとにかく毛嫌いして買わないと、売るほうが決めつけているところがある気がするんだけど。形が悪いものをちょっとでも安くして販売すれば、購入する人はけっこういると思うんだけど、と。

 そしたら、まさに形の悪いものを安価で売るのを見るようになった。ということは、やっぱり買う人がいるからで、私の考えはかなり的を射ていたのではないだろうか。

 そのときのその情報に限らず、報道も横並びというのか、画一的な見方が多いなと思う。例えば「今年は暗いニュースが多かったですね」などと年末によく言うけれど、ニュースは事件や事故を中心に扱っているんだから、暗いのが多くて当然じゃないのか? 要は景気が良かったかどうかが問題で、おそらくそんな発言は誰もしなかった日本の経済が順調だった頃だって、ニュースの内容は大半が暗いものだったと思うんだけど。それに、「スポーツだけは明るい話題が多かったですね」なんてことも口にするが、スポーツは反対に良い結果のものや人たちを主に取り上げてるんだから、そっちの言葉も当たり前でおかしくない? なのに、どこもかしこもそういう見方をしている感じだもんな。

 ま、ともかく、明日のぶんの買い物もできたし、よかった、行って。

「調野さん」

 ん?

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