5. ヘアカット

 トムは同じクラスの人気者であるグレースのことが密かに好きだ。


しかしトムはおとなしい性格でクラスで目立つ方ではないので、こんな自分がグレースを好きでいていいのだろうかという気持ちもあった。


ある日、トムはグレースが女友達と好きな男子のタイプについて語り合っているのを聞いてしまう。


「私は、短髪でセンターパートに分けてて勉強できる男の子が好き」


これだ! 話を立ち聞きしたトムは、学校終わりに隣町の床屋の予約を入れる。


休日に同じクラスの人と会いたくなかったからだ。


日曜日、トムは隣町の床屋に足を運ぶ。


あらかじめ持参した写真を見せ、「こんな感じにしてください」と美容師さんにお願いした。


「かしこまりました。僕にお任せください!」と美容師さん。


美容師さんの腕により、トムの髪型はどんどん変わっていく。


完成形を見せてもらったけれど、トムはグレースがタイプだと言っていた髪型になれて満足だ。


月曜日、トムはいつも通り学校に行く。


クラスの男子生徒は「トム、なんか垢抜けてない?」と噂していた。


女子生徒も「あのイケメン誰?」「トムだよ」「えーっ、うそ?」と話している。


おとなしくて目立たなかったトムだけれど、さっそくクラスの人気者になった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る