3

 ナーナちゃんが引っ越してきて一ヵ月。

 さすがにわたしの隣が人でいっぱいになることはなくなった。


 そんなある日、わたしは係の仕事で職員室に教科のノートを運んでいた。


「まっ、前が見えない~」


 いつもはわたし意外にもう一人いるんだけど、その子は今日お休みで、なんとわたし一人で二教科分運んでいた。


「う、きゃあっ」


 バサバサバサッ。

 床に、ノートがばらまかれてしまったのだ。


「えー……」


 これ、拾うのたいへんだよ~。

 人が通らないうちに拾わなきゃっ。


 そして、10冊くらい拾ったとき、急に角の向こうから声が聞こえてきた。


「ねえ、いっしょに遊ぼっ!」

「うん、いいよ!」


 最初は遊びに誘う女子二人の会話だと思っていた。

 だけど……。



「そんなわけないでしょ!」


 その言葉が聞こえた途端、わたしの心臓が縮み上がった。


「えっ? ウソなの……?」


 怒声を浴びさせられたほうの女の子は、少し疑うような声でそう尋ねる。

 わたしは気になって、角からそっと聞き耳を立てていた。


「うん、遊びたいのはウソじゃない……とでも言うと思った!?」


 ドンッ!


「ひっ……」


 わたしはびっくりして思わず声を漏らす。

 そして角の向こうでは、人が蹴られたような音がして……。

 わたしはそっと角の向こうを覗いた。

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