第3話 異世界への妄想転生、妄想転移
「私」は、自分に都合の良い妄想をよくする。時間は有り余っているのに、お金は無い自分にとって、時間を消費するコンテンツには飽きが来てしまった。なので、自分の頭の中で完結させることのできる妄想が今の自分に残された暇な時間の使い方なのだ。
特に妄想するジャンルは、異世界系の物だ。自分が勇者となり魔王を討つ旅に出るような王道のものから、パーティから追放される追放系や闇落ちするような物まで。
そこまで具体的なジャンルまで考えずに、異世界転生、異世界転移の大きな括りで話そう。
もし、異世界転生をして、赤ん坊として魔法のある世界に生まれ落ちたとする。どんな環境に生まれるかわからないが、成長し、現地の言葉を理解できるようになった後、魔法を覚えることになったら、必ず回復魔法や防御魔法を最優先する。なぜなら、痛い思いをしたくないから。
辛く、苦しい思いをしたくないから。「私」は、自分を守ることに特化したい。
もし、異世界転移をして、今の姿のまま異世界へ行ったとする。まず、その世界で「私」の身体が耐えることができるのかわからないが、それについては考えないとする。
その世界の環境や転移した場所にもよるが、この身体のままなので、チートスキルでも貰うか、世話を焼いてくれる人でのいない限りどこかで野垂れ死ぬだろう。
結局、その世界で生活するのは「私」自身であるのでどちらにせよ、碌な人生にはならないだろう。
「私」が、環境の変化程度で真っ当に生きることができるような人間であったら、とっくの昔からまともに生きているだろう。
さらに言えば、「私」が異世界へ行けば、自分は特別で価値のある人間であると盛大に勘違いしてしまうだろう。そして、自分の勘違いに気づき、自分に失望するだけである。
異世界へ行くことができるような超常現象があるのなら、自分の寿命を行きたいと願う人へ渡してほしい。本心では、死にたくなどないが、その方が世のため、人のためになるだろう。
また、異世界へいけば、現世の「私」は、死亡扱いか行方不明扱いになる。行方不明扱いの場合、家族もいつか捜索を諦める。そうなれば、今住んでいる四畳半の部屋に詰まった宝も処分されるだろう。
なんの価値もない自分だからこそ、自分が価値があると思うものを残したいと思ってしまう。
そのために、異世界に行くときは、家族や数少ない友人へ遺書を書くくらいの猶予が欲しい。もちろん、小説や漫画を処分するのなら、誰か必要とする人のもとへ届くようにしてほしいと書くだけである。
ここまで話してきたことは、もちろん妄想上のことである。こんな無駄な生産性の欠片のないことを考えて時間を消費するのなら、アルバイトでもして給料を得る方がよっぽど利益を生むことができるだろう。お金が無く、時間が有り余っている理由も「私」がアルバイトもしていないからなのに。
それをわかっていてもベッドの上から「私」は動かない。なぜなら、行動することが面倒くさいから、現実から少しの時間でも逃げようと妄想による現実逃避をやめようとしないから。
現実を生きる自分自身の環境を良くしようと努力するから、その成果に関わらず、人間としての価値が生まれると思っている。だからこそ、「私」は、自分自身に価値が無いと自覚して、自分の人生を諦めてしまっている。
その思いもあるからこそ妄想を続けている。別の人生を歩みたいと思ってしまっているから。
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