第2話 窮屈な本棚

 私の四畳半しかない部屋には、いくつかの漫画と小説がぎゅうぎゅうに詰まった本棚がある。ジャンルもバラバラでラブコメの漫画の横に推理小説があるといったように。

 まあ、私は、一つのジャンルや一人の作者の作品を集めているわけではなく、小学生の頃からその時その時に興味を抱いた作品を集めているので仕方のないことなのだが。


 その本棚に一つ、30冊ほどしか収納できない武骨で小さな本棚がある。これは、自分が小学三年生の頃に自作したものである。その時から読書自体は好んでいたが、木工工作自体が好きであったわけではなかった。なのにどうして作ったのか、それは、夏休みの宿題で工作物の提出があったからだ。


 その当時、既に本棚は持っていたはずなのになぜ、その宿題で本棚を作ろうとしたのか今ではもう覚えていない。しかも、釘を打つ際に木材の板が割れてしまわないように約5cmの厚さがある板を使用したせいで、あまりにも重すぎる本棚が出来上がってしまった。出来上がった喜びと同時に後悔したことを覚えている。


 この本棚は夏休みの宿題であるのだから小学校まで持っていかねばならない。当時の非力であった私には不可能であった。しかし、提出はしないといけないので親の車で運んでもらった。作品の展示期間がおわり、家に持ち帰るとき、もちろん親の車で運んでもらった。これはなかなか恥ずかしかった。家に持ち帰った後、数年間は子供部屋で使っていた。


 本棚としては重すぎ、収納力も市販の物と比べると劣る。そんな本棚が今私の部屋で使われている理由。それは、愛着が湧いてしまったから。ただそれだけの理由である。


 小学三年生の夏、父にホームセンターまで連れて行ってもらい、汗をかきながらも必死になってノコギリで木材の板を切り、少しだけドリルで穴をあけてトンカチで釘を打つ。昼になったら近くのショッピングモールのフードコートで400円ほどのラーメンをすすって一休憩した後、再び作業に戻り、完成までひたすら作り続ける。


 こういった経緯や思い出があれば愛着が湧いても仕方ないだろう。だからこそ、実家か四畳半のアパートへ引っ越す際にわざわざ引っ張り出して持ってきたのだ。この本棚を見ているといつでも当時のことを鮮明に思い出すことができる。この本棚を運んだ時に脚にぶつけてしまい擦り傷を負ってしまったことや、近くを通った時に思いきり小指をぶつけ、痛すぎてのたうち回ったことも。


 こうした本棚を使うことで、私は安心感を覚える。そのものを目にするだけで心が落ち着く物。皆さんもそのようなものは無いだろうか。


 私にとってのその物がこの本棚である。私はこの本棚を見るたびに先ほど書いたような記憶や家族の顔が思い浮かんでくる。地元を離れて四畳半の部屋で一人暮らしをしている自分とって、寂しさなどで不安になったとき、自分は一人では無い、孤独ではない、いつまでも家族との繋がりがあるといったように心を落ち着かせることができるのである。


 物そのものとして、世間一般的には無価値に等しいかもしれないが、そのものに自分自身が詰まっている。それこそが、それぞれに生きているの人間にとっての宝であると思っている。この宝とは、物単体に対しての思い出だけでなく、その思い出から派生するように自分自身のルーツをたどっていくことができるといっても過言ではない。これは、やはり宝物、財宝と言えるだろう。

 

 私の場合、それはやはりこの小さく不格好な本棚である。さらに、この本棚は、当たり前のことだが、本を収納することもできる。


 私にとって、小説や漫画もかけがえのない宝物である。私は、宝物の中に宝物を入れることができるのだ。大切な本棚に大切なものを詰めると同時に自分の心が満たされていくように感じる。

 

 私は、こうしたことができることに大きな幸せを感じている。この話のタイトルは「窮屈な本棚」となっているが、これは、ネガティブな意味ではなくむしろ、自分の宝が詰まっているといったポジティブな意味を持つものとしてこのタイトルをつけた。



【まだまだ何をどのように書いていけばわからない状況ですが、突っ走っていきます。どんどん迷走していくと思いますがよろしければ応援のほどよろしくお願いいたします。】

 

 

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