月影
on
月影
ぎゅっと胸の中に抱き込んで
ここなら安心できるでしょって
かけらの隙間もなくして
「…見られてる」
「…こわい?」
「ひっぱってくる」
カーテンの隙間から
確かに感じるそれは
一筋のひかりを描いて
こちらに手を差し伸べている
「こっちにおいで」
俺の耳にも、聞こえる
今日はいっそう明るくて
油断していると
足の裏がぞわぞわする
だから
手を握った
驚いて目が合う貴女に
ただひとつの思いが伝わるように
「あいつのじゃなくて
俺の手をとってよ」
今日だけは
こんなに明るいかもしれないけど
あいつだって
普段は太陽の陰で佇んでるんだ
でも
そんなやつの明かりでさえ
俺達の目は
背中を向けて
その陰で手を握っていよう
あいつが眩しいほど
この場所もきっと
真っ暗で、息が楽になる
だから
連れて行かないで
この闇が
貴女との居場所が
俺には必要なんだ
そんなふうに
あまりに美しくたって、輝いてたって
そんなあんたが
欲しくなるほど
この人が綺麗だって
どうか今は
このままで
寝息を立てる貴女の耳元
鈍く揺らめく銀色は
中途半端な三日月で
今夜の満月には
遠く及ばないけれど
「これくらいが、ちょうど、いい…」
人間だって
欠けてるとこばっかりだ
だいじなことは
それを忘れないでいること
あのピアスは
この月の光で
どんな風に
貴女の薄い耳たぶを
透かすのか
気になっていない
と言ったらうそになる
きっと
それが俺の
欠けているところなんだろう
いつまでたっても
弱いままなのに
月明かりにさえ
震えてるのに
月影 on @non-my-yell0914
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