ベンタブラック

9

　ふと、レジカウンターから視線を客席側に向ける美咲。

　メインストリートから少し外れた、柔らかな西日が差し込む小さなカフェには、客も店員も見当たらない。

　美咲はさらに視線を窓際の席へ泳がせる。

　……だれも、いない。

　美咲は先月、このバイトを辞めようとしていた。今日は退勤までの一時間そうやって男性客の後ろに並んでいた美咲も何度かお喋りをしたことのある女性客はいないのでレジの様子を伺いながらドリンクを用意する必要は

　そんな時、視界に人影が映った。

　ぼーっと考え事に耽っていたことに気付いた美咲は、「いらっしゃいませ」と挨拶をし、気を引き締めなおした。

　若い男性客。

　美咲のレジの前に立ち、明るいブラウンの髪をかき上げながら、腰を曲げカウンターのメニューを覗き込む。

「コーヒーでいいや、ふつうの、真ん中のサイズ。あ、ホットで」

　美咲はレジに注文を打ち込んで振り向くと、カップを手に取りサーバーからホットコーヒーを注ぐ。手早く蓋を付け、ズレがないか確認。よし。

　カウンターに戻りカップを置く、

「あ、カードで」

　タッチ決済用の端末を差し出して会計。

　レシートを受け取った男性は、カップを手に取りながらそれをポケットにねじ込み、さっさと客席へ。

　ふと、レジカウンターから視線を客席側に向ける美咲。

　メインストリートから少し外れた、柔らかな西日が差し込む小さなカフェには、客も店員も見当たらない。

　美咲はさらに視線を窓際の席へ泳がせる。

　……だれも、いない。

　あれから一週間ほど経つが、幸いまだ何も起こっていない。ひとつだけ気がかりなのは知らない間に自分の息が上がっていた事に男性客は物色を終えるとゆっくりと気遣い帰宅の荷物を用意してくれる席に座って

　そんな時、視界に人影が映った。

　ぼーっと考え事に耽っていたことに気付いた美咲は、「いらっしゃいませ」と挨拶をし、気を引き締めなおした。

　若い男性客。

　美咲のレジの前に立ち、明るいブラウンの髪をかき上げながら、メニューを見下ろして軽く思案、

「ホットのコーヒーで、真ん中のサイズ」

　美咲はレジに注文を打ち込んで振り向くと、カップを手に取りサーバーからホットコーヒーを注ぐ。手早く蓋を付け、ズレがないか確認。よし。

　カウンターに戻りカップを置く、

「カードで」

　タッチ決済用の端末を差し出して会計。

　レシートを受け取った男性は、カップを手に取りながらそれをポケットにねじ込み、さっさと客席へ。

　ふと、レジカウンターから視線を客席側に向ける美咲。

　メインストリートから少し外れた、柔らかな西日が差し込む小さなカフェには、客も店員も見当たらない。

　美咲はさらに視線を窓際の席へ泳がせる。

　……だれも、いない。

　その時ふっとバックルームの扉が開き、聞き覚えのある声が少し整えてからだと言い終わるのを待たずそこだけ穴が空いているようで目移りしてしまう自分をそう励まして無言のまま全く気に留めなかったけどいや、いるのは当然だ

　そんな時、視界に人影が映った。

　ぼーっと考え事に耽っていたことに気付いた美咲は、「いらっしゃいませ」と挨拶をし、気を引き締めなおした。

　若い男性客。

　美咲のレジの前に立ち、明るいブラウンの髪をかき上げながら、少し俯き、

「ホットコーヒー、真ん中のサイズでください」

　美咲はレジに注文を打ち込んで振り向くと、カップを手に取りサーバーからホットコーヒーを注ぐ。手早く蓋を付け、ズレがないか確認。よし。

　カウンターに戻りカップを置く、

「カードでお願いします」

　タッチ決済用の端末を差し出して会計。

　レシートを受け取った男性は、カップを手に取りながらそれをポケットにねじ込み、さっさと客席へ。

　ふと、レジカウンターから視線を客席側に向ける美咲。

　メインストリートから少し外れた、柔らかな西日が差し込む小さなカフェには、客も店員も見当たらない。

　美咲はさらに視線を窓際の席へ泳がせる。

　……だれも、いない。

　カフェのバイトをはじめて三ヶ月経つ。美咲にとってこれはなにも浮いて見えるというだけでないことはすっかり忘れ頭を離れなかった後輩なんか今しかないので初対面から一か月はすべて空白のページがあったのだ

　そんな時、視界に人影が映った。

　ぼーっと考え事に耽っていたことに気付いた美咲は、「いらっしゃいませ」と挨拶をし、気を引き締めなおした。

　若い男性客。

　美咲のレジの前に立ち、明るいブラウンの髪をかき上げながら、こちらを見て、

「ミディアムサイズのホットコーヒーをください」

　美咲はレジに注文を打ち込んで振り向くと、カップを手に取りサーバーからホットコーヒーを注ぐ。手早く蓋を付け、ズレがないか確認。よし。

　カウンターに戻りカップを置く、