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「らぁっしゃいませ~」
レジでのやりとりに気を配りながら、美咲はバーカウンターに入りドリンクを作っている。ドリップコーヒー以外の、エスプレッソやミルクを使ったメニューを提供する場所。
ドリンクの受け取りカウンターには男性客と、その後ろに常連の女性客。美咲も何度かお喋りをしたことがあり、久しぶりに挨拶を交わしたいと思った。
あまり待たせたくない。手慣れた手つきでエスプレッソをカップに注ぎ、その上からスチームしたミルク。
「カプチーノのお客様、お待たせしました」
愛想よくカウンター越しにドリンクを渡す。 こちらを見もせず、男性客はスマートフォンから目を離さないまま正確にカップを手に取り、すぐに去ってゆく。
いや、その技術逆にすげーわ。
呆れ半分に呟くも、すぐさま次の女性客のドリンクを用意。
適量のミルクをピッチャーに注ぎスチーム。合間にエスプレッソをセットして抽出開始する。ミルクのスチームが終わりスチーマーのノズルを拭くと、丁度エスプレッソの抽出が完了。ベストなタイミングだ。
それをカップに注ぎ、ピッチャーの底を軽く叩いてフォームを慣らしたら、ミルクを勢いよく注ぐ。七分目あたりで勢いを調整し、静かにフォームミルクを注ぎながら、最後はカップの縁へ向かってミルクピッチャーを素早く動かす。
めっちゃ綺麗にできた……
完璧なバランスのラテアート。
しかし美咲の勤めるカフェは原則としてドリンクには蓋をする。
まぁ気持ちだから、こういうのは……
手早く蓋を付け、ズレがないか確認。よし。
「お待たせしました!」
女性客は笑顔を浮かべてドリンクに手を伸ばす。
「こんにちは、お久しぶりですね」
美咲は笑顔で顔馴染みの彼女に声をかけた。
ドリンク受け取った女性は、無言でそのまま去って行った。
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