21 ちきゅううり/押田桧凪さん

 台湾の夜市に行きたいわん!


【ちきゅううり/押田桧凪さん】

https://kakuyomu.jp/works/16818093083901775303


ジャンル:現代ドラマ

文字数:1785文字


 押田桧凪さんの作品は、異国の香りがする台湾の夜市でのお話です。


 まず題材ですが、やっぱり観光地のご当地フードというのは強いですね。特に台湾の夜市というだけで熱気と人いきれ、そして臭豆腐チョウドウフの独特の香りが沸き立ってきます。日本の屋台で言うと、焼きそばやお好み焼きのソースの匂いがする、という感じに近いと思います。


 そして食レポというタグ通り、描写にみっちり臨場感と夜市の空気が漂っていて素敵です。主役は地瓜球ディーグアチョウなのですが、作中に登場する大鶏排ダージーパイの描写も最高です。主催者はこれを台湾の高速鐵道の駅弁で食べましたが、やっぱり夜市の揚げたても食べるべきだったなあとこれを読んで少し後悔しています。鍋の油の音、ドバドバ揚げられる鶏肉、包丁でバンバン切られて串に刺されてジュワっとする。うーん、最高!


 そして主役の「地瓜球ディーグアチョウ」も負けていません。さつまいもをボール状にして揚げた台湾の揚げスイーツで、別名は「QQ球」「QQボール」とも言うようです。サクッとしているけれどもちもちの弾力とほのかな甘さに魅了され、主人公たちはこの地瓜球ディーグアチョウに見事にハマります。


 それから本作は何よりタイトルがいいですね。読めば内容に即したシンプルなものですが、読者に「地球瓜ってなんだろう?」と思わせる秀逸なものだと思います。更に「地球」という言葉が入ったことで世界全体、異国の話であることも匂わせていると感じます。呪文のように「ディーグアチョウ」と繰り返すところも楽しくていいですね。


 気になった点は、ちょっと終わり方が駆け足になっていたところです。実際に地瓜球を自宅で作り上げたところまで書き切ったり、「今度の休みに作ろう」などストーリーに区切りをつけるとピリオドが明確になるかなと思います。


 全体的に主役の「地瓜球ディーグアチョウ」のインパクトが強く、また台湾の夜市というロケーションが熱気と美味しそうな匂いを読者に届ける食レポに徹した作品です。地瓜球ディーグアチョウ、現地ですっごく食べたいです! 美味そう!!


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