19 ポテチを巡る時の旅~天才とアンドロイドを添えて~/筋肉痛さん

 分かる人には分かるんです、ポテチはもっと暴力的な美味さがある。


【ポテチを巡る時の旅~天才とアンドロイドを添えて~/筋肉痛さん】

https://kakuyomu.jp/works/16818093083763851119


ジャンル:SF

文字数:5084文字


 筋肉痛さんの作品は、ポテトチップス誕生に纏わる面白いお話です。


 ポテトチップスが大好きな博士が、自身の開発したアンドロイドと時空を超えてポテトチップスの開発者のところを訪ねる。ところが出てきたフレンチフライは分厚くて博士が文句を言うと、出された芋はまさしくポテトチップス。こうしてポテトチップスは誕生したのでした。


 これは大筋で本当の話で、ポテトチップスはジョージ・クラムという料理人によって1853年に開発されたという話が有名です。しかし、この話も近年「実在の人物をモチーフにした神話である」という研究があるみたいです。カルビーのHPにもでかでかと書いてあるのに……。


 まず、博士とアンドロイドのやりとりがゆるくて可愛らしくていいですね。全体的に雑談のようなやりとりなのですが、「ポテトチップスの開発者のところへ行く」という目的が明確なので読者も一緒に時の旅に出ているような気分になります。時を超えたアンドロイドは全裸でなければならない、全部抱きしめられてしまうというような小ネタもいいですね。「分かる人には分かるんです」という突き放した文が開き直っていてとても好きです。


 この作品の中では「ポテチはもっと暴力的な美味さがある。」という一文が光っていると感じました。徹頭徹尾ポテトチップスの話をしている中でポテトチップスの魅力を最大限に引き出しているいい言葉だと思います。主催者もポテトチップスを形容するときに使いたいです。それに作中で暴力的な行為もあるので、そこにも引っかかるような形になっていて面白いです。


 気になった点は、怒濤の小ネタに挟まれて肝心のポテトチップス開発秘話がちょっと埋もれ気味になってしまった印象を受けたところです。客からの分厚いというクレームが大事なので、もっとそこを強調できると更にポテトチップス開発秘話っぽくなると思いました。


 全体的にポテトチップスの開発者に会いに行くという逸話をベースした、ポテチ大好き博士とアンドロイドのゆるい会話劇が楽しい作品です。暴力で開発されたポテトチップスの暴力的な美味さには敵いませんね。

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