18 祭りと串カツ/雪屋梛木(ゆきやなぎ)さん

 負けるがカツのノスタルジー。


【祭りと串カツ/雪屋梛木(ゆきやなぎ)さん】

https://kakuyomu.jp/works/16818093083780947741


ジャンル:現代ドラマ

文字数:2020文字


 雪屋梛木(ゆきやなぎ)さんの作品は、ノスタルジー溢れるお話です。


 幼い頃に食べた串カツの味を思い出しながら、主人公はかつての町内会の祭りを思い出す。町内会ごとに獅子が奉納されていて、他の町内会と争う喧嘩獅子が祭りの一環として行われている。主人公たちの町内会はとても美味しい串カツ食べたさに、子供たちはわざと喧嘩獅子に負けていた。久しぶりに主人公が祭りに顔を出すと、串カツはコロッケになっていた。しかし獅子と子供たちにコロッケの取り合わせは変わらず、主人公は祭りのコロッケを堪能する。


 食べ物は記憶を呼び覚ますと言いますが、この作品はまさしく記憶と味に纏わる物語だと思いました。そして「昔の町内会のお祭り」の手触りが強くて、このお祭りに行ったことがないのに主催者は参加していたような気がしました。特によかったのは、会場の駐車場の様子です。「砂利の上に虎紐を釘で打ったもの」という説明で、どういう駐車場なのかぐっと情景が見えるようです。あったあったそんな駐車場。轍のところがへこんでいって、雨が降ると大きな水たまりになる駐車場だ!


 過去の祭りの様子、そして現在の祭りの様子も無駄なく書き込まれているところが良いと思いました。非日常である祭りの独特の雰囲気に添えられる串カツやコロッケの匂いが、読者のノスタルジーや食欲をそそります。


 気になった点は、これは欲を言えばの話なのですが大人になってからの祭りの会場の様子をもっと書き込むと過去と現在の対比がより鮮やかになったかなと思いました。駐車場は舗装されていたり、大きな銀のトレイがやけに小さく見えたり、そんな描写があるとよりノスタルジーが増すと思いました。


 全体的に少年時代の思い出を中心に構成されていて、誰でも共感できるようなやさしい雰囲気の作品です。子供の頃の大好きだった雰囲気が次の世代に受け継がれたことに満足する主人公の締めの言葉が格好よくて好きです。

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