17 日英コンビとフライケーキ/キトリさん

 紅葉饅頭もいいけどフライケーキもオススメ!


【日英コンビとフライケーキ/キトリさん】

https://kakuyomu.jp/works/16818093083751550032


ジャンル:現代ドラマ

文字数:5209文字


 キトリさんの作品は、ご当地揚げ物と広島県呉市の観光ストーリーです。


 広島で働く大和は、ネットで知り合った留学生のニックに呉市の観光案内をする。その中で訪れた「福住フライケーキ」の名物のフライケーキを食べるというのが主な展開です。個人的に主催者、この作品大好きです。


 まず「観光」と「ご当地揚げ物」というストーリーのチョイスが素晴らしいです。これは絶対食べ物を中心にした話になるしかないじゃないですか。しかも観光地にある名物とあれば、味も背景も保証されたようなものです。ここで読者の信頼にひとつ応えていると感じました。


 ここで登場する「フライケーキ」は呉市発祥の揚げ饅頭のことで、あんドーナツのようなものだそうです。作中登場する「福住」は実際にあるお店で、語り手の大和の言うとおり呉市民のソウルフードだそうです。美味しそう。


 それから、語り手である大和のプロフィールが少しずつ詳細にわかっていくところもいいですね。「高専卒の公務員一年目」というところで年齢、そして広島県は呉市に高専があるということで地理にも明るい理由になっています。


 この話は観光旅行中の二人の何気ない会話が中心となっていますが、基本的に「英語圏と日本語圏での言葉の違い」というテーマが垣間見れてよかったです。英国のプディングと日本でいうプリンの違い、そしてさりげない会話のオチに使われていますが「日本語の教科書の絵はショートケーキしかないから日本にはショートケーキしかないと思った」というニックの指摘に唸らされました。この会話が「大和のミュージアム」にも繋がっていて、一貫性がある内容がいいですね。


 気になった点は、本文中で舞台が呉市だとわかるまで少し時間がかかったので冒頭やタイトルなどから「舞台は広島県です」というようなアナウンスがもっとはっきりわかるといいかなと思いました。戦艦大和と広島が即座に結びつくかどうかは、ちょっと微妙かもしれません。


 全体的に国際色豊かで、フライケーキを中心に日英の文化の比較をするという主旨がわかりやすい作品でした。この二人が他の観光地でどんなやりとりをするのかも見てみたいですね。

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