14 美味しかったのならいいじゃんか。/秋乃晃さん

 キャラクターとドーナツが光る!


【美味しかったのならいいじゃんか。/秋乃晃さん】

https://kakuyomu.jp/works/16818093083583316821


ジャンル:ホラー

文字数:1022文字


 秋乃晃さんの作品は、ジャンルこそホラーですがとってもかわいらしいドーナツです。


 主人公の弐瓶柚二にへいユニちゃんは秋乃晃さんの他の作品のキャラクターだと思われるのですが、このお話だけなら彼女が何者なのかというのはあまり問題になりません。ドーナツをたくさん買って、おまけに着いてきたドーナツが光っているというだけなので初めて彼女に触れる人でもわかりやすいお話になっています。それに「新商品より定番商品を買ってしまう」という共感を得やすい話題が中心になっているのもいいですね。


 ここが秋乃晃さんの上手なところですが、このお話を読む限り弐瓶柚二ちゃんはおそらくとても癖が強いキャラクターだと思われます。そうすると弐瓶柚二ちゃんの登場する本編を読まないと理解できない言動などもありそうなのですが、このお話は綺麗にここだけで完結しています。もし弐瓶柚二ちゃんに興味が出たら本編もどうぞ、と言わんばかりに潔く完結しています。つまり、ものすごく後味が良いです。


 キャラクターの描写というと大体は外見に終始してしまうのですが、一人称であるため弐瓶柚二ちゃんの外見は一切描写されていません。それなのに、何となく主催者は背が低くて髪の色がピンクか水色のふわふわした女性を想像してしまいました。しかもドーナツが光っていても怪しがることなく平気で食べてしまうちょっと豪快で天然な性格もよく表現されています。外見ではなく内面でキャラクターを描写するということを徹底した作品だと思いました。


 気になった点は、やはりドーナツの謎は作中で解明して欲しかったなというところです。寿司などの生ものは細菌の繁殖により青白く光ることもあるようなので、このドーナツは本当に食べて大丈夫だったのかやっぱり明記して欲しかったところであります。細菌の繁殖したドーナツでなかったことを祈るばかりです。


 全体的に弐瓶柚二というキャラを魅せることに一貫した小説で、彼女の魅力が遺憾なく発揮されている作品です。ドーナツを買って食べるだけでサマになる彼女はきっと魅力的だと感じました。

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