13 揚げ者狩人/筆開紙閉さん

 サソリを揚げるサソ!


【揚げ者狩人/筆開紙閉さん】

https://kakuyomu.jp/works/16818093083092327822


ジャンル:現代ファンタジー

文字数:1753文字


 筆開紙閉さんは豪快なファンタジーを書いてくれました!


 舞台は地球温暖化と魔王の侵略によりサバイバルを余儀なくされた未来。主人公は揚げ者と呼ばれる悪い存在をやっつける揚げ者狩人として、悪い揚げ者たちを退治していく。


 この作品の特長は、勢いとテンポがとてもよいところです。「魔王とは一体」「何故揚げ者たちは戦っているのか」という読者の疑問の予知を挟むことなく、主人公と揚げ者たちが戦うことになります。そして揚げ者には特攻の赤い槍を繰り出すことで主人公は勝利します。細かいことはどうでもいいです。やった、勝ったぜ!


 そして登場する高級揚げ者との戦い。サソリがサソサソ言うのもポイント高いですが、主催者はこの台詞がとても好きです。


「高級揚げ者とお見受けします。私は揚げ者狩人、台場クリストファーと申します。死ね」


 この台詞には「ザコ揚げ者と高級揚げ者という階級の違う揚げ者が存在する」「高級揚げ者には敬意を払うらしい」「主人公の名前は台場クリストファーというらしい」「両者は敵対している」という情報がぎゅっと詰まっています。敬意を払っているのに「死ね」ですからね。そのギャップが何だか好きです。


 最後に登場する師匠もいいですね。「揚げ者十三始祖」って何だよっていう絶妙に十三人ちゃんと設定考えているのかいないのかわからないラインの存在が主催者は大好きです。


 この作品の一番よいところは、「作者がやりたいことをしっかり明示している」というところです。とりあえず戦いたい、近未来SFっぽい世界で戦いたい、世界観とかつじつまとかどうでもいいから戦いたい! そういうエモーションを感じます。つまりとてつもない勢いがあります。あれこれ迷ってつじつま合わせに奔走するより、こういう「自分が書きたいもの」をぼーんとひとつ出してもらった方がとっても読みやすいと思います。


 気になった点は、冒頭で紹介があったので海の者もお話に登場させてほしかったなというところです。エビ天にタコの唐揚げ、キスにししゃもなど揚げ物にするには最高な人材(?)が揃っているのでそちらの展開も見てみたいです。是非揚げ者十三始祖の残りのメンバーと戦わせてほしいです。


 全体的に硬派な文体でハードな戦闘描写のお話ですが、ユーモアに溢れていて楽しい作品です。読んだ人の心に何か爪痕を残すような幕切れも印象的でした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る