12 キジムナーと丸いドーナツ/斑猫さん

 たこ焼きみたいなドーナツが美味しそう!


【キジムナーと丸いドーナツ/斑猫さん】

https://kakuyomu.jp/works/16818093082739169542


ジャンル:ラブコメ

文字数:3958文字


 斑猫さんの作品は、可愛らしい沖縄の妖精キジムナーのお話です。


 鉢植えのガジュマルを買ったところにキジムナーが本当に着いてきたという導入は、日常を崩さずに異界の者を挿入させながらこれからのイベントに期待をさせるいい展開だと思いました。余談ですが、主催者はちょっと鉢植えのガジュマルが欲しくなりました。大きさも世話も手頃で、いろいろちょうどいいですね、ガジュマル。


 そしてキジムナーと言えば期待を裏切らず登場するのがサーターアンダギーです。沖縄の郷土料理で「砂糖+揚げたもの」を意味するこちらのお菓子は縁起物としても振る舞われるそうで、結納では女性を意味するサーターアンダギーと対で男性を意味するカタハランブーというお菓子とセットで出されるそうです。


 この作品の良いところは、登場人物全員の仲が良く安心して読めるところです。キジムナーの嫌いなものはタコとニワトリというところから、たこ焼きを結びつけたところもいいですね。たこ焼きが苦手なキジムナーのためにたこ抜きのたこ焼きを用意する、そして丸いドーナツを揚げてみるという流れも自然ですっと作品の中に入り込めます。主人公と月子、そしてキジムナーのハルが短いやりとりの中で互いを思いやっているのがわかって良かったです。


 気になった点は、沖縄の妖精であるキジムナーに「ハル」という名前をつけていたところです。常夏のイメージがある沖縄に「春」というのは日本語として少し違和感があると感じました。月子の名前付けに主人公が突っ込んでいるシーンがあるので、おそらく彼女のネーミングセンスが少し変わっているという描写だと思うのですが、キジムナーはメインキャラクターなのでもう少し沖縄っぽい名前のほうが読者にはわかりやすいと思いました。


 全体的に可愛らしい雰囲気で、キジムナーという怪異が日常に紛れ込んでもそのまま何事もなかったかのように日常が続いていくのに安心できます。ほっとしたいときに甘味のような感覚で読みたい作品だと思いました。

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