9 ボーナス出たらうなぎでしょ/モモチカケルさん

 たいこ持ちが現れた!


【ボーナス出たらうなぎでしょ/モモチカケルさん】

https://kakuyomu.jp/works/16817330669162876184


ジャンル:現代ドラマ

文字数:6516文字


 モモチカケルさんの作品は、脚本風で落語の翻案のようなお話です。


 こちらは既存作品の番外編のような作品になります。落語研究会ではなく草サッカー同好会の三元時次と餌、シャモ(共に人名)と自宅である割烹で豪華なまかない飯を食べます。そこに羽振りのいい男たちがやってきて事件が起こる、というのが概要になります。


 おそらくこちらはストーリーを見せる目的ではなく、キャラクターを見せることを目的に書かれた短編であることが推測されます。キャラを立たせるためにキャラクターには食事をさせろとよく言います。食事制限を必要とするほど太っている三元、そして何か理由があるのかもしれませんが三元の友人ということでまかない飯をもらう餌とシャモ。メインのストーリーではあまり出てこない彼らの素顔というのがこの作品なのでしょうか。


 そう考えると、この作品の全体的な主役はキャラクターより、この「割烹芝浜」という空間かもしれません。ボーナスが出て羽振りのいい客の描写は気持ちがよく、また仲良くまかないを食べる高校生たちの様子も生き生きとしていて、特にかきあげソバがおいしそうですね。食べたいのに食べられないというところがまた食欲をそそる描写だと思いました。


 そしておそらくメインストーリーの「鰻の幇間たいこ」ですが、「たいこ持ち」という職業が昔のものなので、現代風に直すのがやはり難しいところです。落語であれば笑い話で下げるところですが、現代が舞台だと無銭飲食の置き引きで警察沙汰にしかなりませんね。笑えるのか笑えないのか、ちょっと微妙なラインでしょうか。


 気になった点は、キャラクターの説明です。概要欄にも本文中にも「本編を読まなくても大丈夫」とありましたが、申し訳ありません。主催者には少し難しかったです。既存作品を楽しまれていて前提が共有されている方には楽しめる要素があると思うのですが、初見の方にはハードルが高いように思われます。「落語、サッカー、みのちゃんねる、お百度参り」など繋がりが見えない単語が続々登場するので情報の整理が追いつきにくいので完全なスピンオフ作品と割り切るか、初見でもすっと読めるよう情報をそぎ落とすといいかもしれません。


 全体的に主人公の家の食事処を舞台に登場人物が代わる代わる食事をし、店が賑わっている様子が伝わってくる作品でした。キャラクターが気になった方は本編も読んでみるといいかもしれませんね。

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