　それは許したり許さなかったり。

【あの頃、揚げ物と彼女と/@thriceさん】

https://kakuyomu.jp/works/16818093081955782682

ジャンル：現代ドラマ

文字数：3181文字

　@thriceさんの作品は、恋人と別れて成長する少しほろ苦い恋のお話です。

　栄養士の彼女から健康面から不摂生を指摘され続ける主人公だったが、見かねた彼女により野菜の天ぷらを食べさせられる。そのおいしさに舌鼓を打ちつつも、完璧主義の彼女とはすれ違い最終的に破局する。その後不摂生を反省してダイエットに目覚めた主人公の前に結婚出産を経て心身共に少し丸くなった彼女が現れる。

　男性視点でこれを見ると「俺も成長したし彼女も丸くなってよかったなあ」でおしまいで、実際これ以上のお話ではないのですが彼女視点で見るともう少し面白いお話になるかなと思ったので、このお話から読み取れる彼女の話を少ししたいと思います。

　ポイントは彼女が出産してから半年しか経っていないというところでしょうか。主人公は彼女が改心したから結婚して丸くなったと思ったと思うのですが、実際のところは妊娠出産を経て丸くなったのではないかと考えます。何故なら、妊娠出産は結婚以上に自分の思い通りにならないことだらけだからです。それこそ他人をコントロールどころか自分もコントロールできない状態になるので、彼女にとっては相当ストレスがかかる時期だったと思われます。

　そこで自分が変わってしまったことは、女性として少し落ち込むところでもあると思います。しかし、前向きに変化のあった主人公に出会うことで、彼女は少し救われたのではないかと推測します。自分が撒いた種が身を結んでいたことがわかって、彼女もこれからの人生が明るくなったことと思います。

　気になった点は、エピソードが全体的に繋がっていて時間経過がわかりにくいと思ったところです。特に彼女と別れた場面や再会する場面は作中でも時間が経っているので一行空けて段落を分けるとすっきり読めると思いました。

　全体的に感傷的ですが、前向きな結末でさっぱりとした読後感が印象的な作品です。主人公と彼女のこれからが明るいものになるよう応援したくなりました。