6 邪魔者は失せろ/翠雪さん
隙間、空いてるね。
【邪魔者は失せろ/翠雪さん】
https://kakuyomu.jp/works/16818093081892617738
ジャンル:恋愛
文字数:1774文字
翠雪さんの作品は、失恋した女の子と彼女を慰める主人公の少し大人な小説です。
この作品は二人の関係性が突然ぐらりと動くシーンが秀逸ですね。そこに至るまで主人公は友人を捨てた男にひどく苛立っています。その理由は彼女こそが友人を一人の女性として愛しているからなのですが、そこに至るまでの過程がとても丁寧に書かれています。
まず、揚げ物の小道具としての使い方がいいです。主人公が買い出してきたのはコンビニのホットスナックにポテトチップス、それからチューハイです。ここからわかるのはこの会合が急遽開催されたもので、また二人が気の置けない関係性であるということです。もしこれが事前に告知された集まりであるなら、友人の部屋に出向くのに主人公はもう少し気取ったつまみや酒を持参するでしょう。そうでなかったというところから、いろいろ想像が膨らむのはいいと思いました。
それに主人公が九%のロング缶に対して、友人が弱い桃色の缶というのもいろいろ想像の余地があっていいです。本来怒って酔いに任せたいのはフラれた友人であるはずです。しかし、何故か主人公のほうが大げさに酔おうとしています。これは結末への振りでもあるので、「そういう体質のキャラだから」で片付かない演出だと思いました。主人公は失恋した友人の前で酔い潰れたがっている、というのがポイントです。
そして、この作品最大の魅力は締めの一言だと思います。「雫を垂らすチューハイは、翌朝に冷蔵庫へと運ばれた。」の一文だけでその後の二人の様子を一切書かず、ただ時間経過を表す一言が添えられているのがすごくいいですね、オシャレです。個人的な見解ですが、濡れたチューハイがその後の二人を表していて、友人宅の冷蔵庫へ収まったチューハイで主人公はめでたく彼女の隙間に埋まったことを暗示しているのかなと思いました。
気になった点は、巧妙な伏線が見事なのですが二人の関係に終始してしまってサラっと読み進めてしまうところだと思いました。例えば酷い男のエピソードを盛り込むなどして、主人公の怒りの山場をもう少し作ると更に盛り上がると思いました。
全体的にテーマが一貫していて、キャラクターも際立っていていい百合小説だと思います。コンビニで買ってきた食べ物たちが彼女たちの状況をしっかり説明しているのもよかったです。
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