4 何は無くとも楽しい二人/崇期さん

 ないない尽くしの人生に。


【何は無くとも楽しい二人/崇期さん】

https://kakuyomu.jp/works/16818093081830429142


ジャンル:詩・童話・その他

文字数:1885文字


 崇期さんの作品は、揚げ物を中心にした男女の何気ないやりとりを中心に構成されています。


 主人公は五十二歳にしてないない尽くしの人生ですが、交際歴二年の女性がいます。一体その女性とどこで知り合ったのかなど気になることがあるのですが、それは本題ではないのでカットされています。こういうテンポの良さはいいですね。


 主人公はカニカマの天ぷらの代わりにウィンナーの天ぷら、ちくわの磯辺揚げの代わりにちくわのポテトサラダ挟み揚げ、最後に鶏肉ではなく牛肉の唐揚げにレモンではなくカボスと大根おろしをかけて食べます。いわゆる「じゃない方」の食べ物のほうがおいしい、という結論から二人とも「じゃない方」であることを受け入れるという構成です。


 深くは語られていませんが、52歳で独身という主人公も、彼氏を家に呼んで手料理を振る舞うはずなのに肝心の食材が悉く用意できない彼女も、おそらく世間で「じゃない方」と軽く扱われていたのだろうと推測できます。「それでも受け入れてくれるところがあるから明るく前を向こう」が主題だと思うのですが、そこに気がついたところでお話が終わってしまうために「この二人はないない尽くしだったのだな」という印象が強く全面に出ていると感じました。これから二人で支え合って、楽しい思い出をたくさん作って欲しいと願わずにはいられません。


 気になった点は、架空の人物といっても男性が一方的に女性が作ってくる料理を食べているだけというのは令和の価値観では当たり前に受け入れられない可能性があるため、コメディにするにはもう少し現実離れした設定があると良いと感じました。暗にこういう男性を批判しているのであれば、もっと豪快にキャラを暴れさせてもよいかと思います。


 全体的におもちゃ箱をひっくり返して読者の意表を突くような、賑やかな印象のお話です。ないない尽くしの中で次は何が飛び出すか、読者も一緒に考えてしまうような作品だと思いました。

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