第15話 魔法ギルド①

 「さて、つきましたよ。」

そう彼女が言って立ち止まったのは、大きな建物の前だった。窓の配置から推測するに3階だてといったところか。


「魔法ギルドでは、魔法の実験や、召喚術などもするのか?」

「はい。もちろん、大規模なものは別の実験施設で行いますが、大体はここで行われていますね。」

「なるほど。すると、地下もあるということか。」

「そうですね。むしろ、地下こそ本部といったところです。地上に出ている3階はどちらかというと、事務や相談所、取引場所といったところですから。」

 どうやら、研究と商業は分けているらしい。それも、当然か。せっかくの研究に利益云々の話が出てくるなど、興醒め以上の何者でもないからな。

 

「今日は素材の取引だけですが、一応地下にも寄りますよ。」

「最新の研究事情を知るためか?」

「それもありますが、知り合いがいますのでその子に会いに行くのですよ。」

「なんだと!?言い方はあれだが、森の中に引きこもっている深淵の大魔女に知り合いがいるだと!?」

「はっ倒しますよ。」

そう言って、彼女は頬を膨らませた。怒っているようだが、ぶっちゃけ可愛いと思ったのはここだけの話だ。




そして、私達は魔法ギルドに入った。

「ようこそ、魔法ギルドへ。これはお久しぶりですね、セシリアさん。今日はなんのご用ですか?」

「研究成果や素材の買い取りを頼みます。あと、時間があれば地下にも寄りたいです。」

「かしこまりました。ギルド長に話を通しておきます。して、そちらの方は?普段はお一人で来られるのにお連れの方がいらっしゃるのは珍しいですね。」

「私の彼氏です。」

「違うぞ。」

「照れなくてもいいんですよ。」

「だから違うと。」

「はいはい。ラブコメは他所でやってください。実際のところは?」

「まあ、助手と言ったところだ。」

「助手ですが、めちゃくちゃ有能で、私の立つ瀬がありません。」

「セシリアさんがそこまでいうとは。一応、確かめさせてもらいますか。助手さん、この水晶に触れてくださいませんか?」

そう言って、受付の人は大きな水晶を持ってきた。

「これは魔力量を計るものです。ちなみに、セシリアさんはこれを割りました。」

 私が持っているのは魔力ではなく、神力なのだが。それでも魔力と神力はどこか似通ったところがある。セシリアの魔力を見たことはあるから、組成はだいたいわかっている。あと、この世界にも結構慣れた。幾許かは順応できている。あんまりやりすぎると、目立ってしまい、彼女の言いつけを破ってしまうから、順応できた分を注げば良いか。それでも、セシリアの格を傷つけないくらいの結果は必要だろう。難しいところだが、やってみるか。

 




 そして、私は水晶に触れた。すると、水晶が輝き、ヒビが入った。





「なるほど、魔力量はセシリアさんに劣りますが、それでも凄まじい量ですね。」

「ええ。しかも、彼は器用なので細かい作業とかでは特に助けてもらっています。」

そう、彼女達は談笑していた。一応、調整したが、いい感じのラインになったみたいだ。

そして、素材の取引における書類にサインをした後、2階にある、ギルド長室に通された。




「これは、深淵の大魔女セシリア様。遠路はるばるようこそおいで下さいました。さて、今日はどのような成果をお持ちで?」

「そこまで、畏まらなくてもよろしいのですが。色々とありますが、目玉は空の王ガルダの死骸です。むろん、こちらの研究に使う分は抜いておりますが。」

そういうと、ギルド長はのけぞって、驚愕をあらわにした。


「ガルダですと!?あの、国すらも滅ぼすといわれし、風の災厄ですか!?一体どこから?」

「倒しました。」

「なんですと!?ガルダがあなたの住まう、魔の森タルロムにいるのはともかく、まさか倒してしまわれるなんて。」

「もちろん、私一人では不可能でしたが、彼、助手であるギルファルガさんのおかげでなんとか。」

「ほう、そこにいらっしゃる連れのお方のことですね」

「ええ。そして、ガルダの素材を用いて、この天空杖アルシエルを作ってくれました。」

彼女は、そう言ってアルシエルを取り出した。

「この感じ、国宝以上の性能をしていると見られます。ガルダの死骸を素材として、作られているのもありますが、それ以上にこれを作ることができるあなたの技術にも驚きました。あなたは何者ですか?」

 

 何者と来たか。この世界に来てまだ、日が浅いからな。本当に名乗るわけにも行くまい。だが、身分を明かせないなどというと、怪しまれて、彼女に迷惑をかけることになる。


 ならば・・・・・・・・・



「世界を巡るただの旅人、名前はヴィレ・アズマという。魔術や魔法は旅の中で学んだ。魔の森タルロムで迷っていたところ、セシリアに助けられた。経緯はこんなところだ。」



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