第13話 飛翔魔法ガルゼア
朝が来た。
窓から漏れる朝日が眩しい。昨日は色々とあったなと思って目を覚ました。
起きて、食卓に向かうと、珍しく、彼女がいなかった。普段は私より早いか、同じくらいには起きるのだが。まあいいか。こちらで朝食を作っておこう。
「朝食だし、派手なものでなくてもいいか。」
そして、冷蔵庫に保管してあった果物類や野菜を盛り付けて行って、パンを焼きつつ、温かいスープを作った。ちなみに、スープはコンチスタースープだ。
そうやって準備をしていると
「おはようございます。遅れてすみません、寝坊してしまいました。」
「気にするな。こちらも今起きたところだ。」
「今起きたにしては、料理が出来上がっているんですが?」
「まあ、気にするな。食事としよう。」
彼女はどこか、呆れたような顔をしながら席に着いた。そして、朝食を一緒に食べたのだった。
朝食を食い終わった後、我々は庭へ出た。
「昨日、あなたが作ってくれた天空杖アルシエルですが、色々と調べたところ、この世界では上位レベルの武器であることがわかりました。」
「そうか、大事に扱ってくれると嬉しい。」
「はい、もちろんです。そして、今日はこれを元に飛翔魔法ガルゼアの実験を行いたいと思います。」
そう言って、彼女は詠唱を始めた。
「属性指定・風 魔法陣展開 風属性特殊魔法起動・
すると、彼女の体が浮かび上がった。
「わぁ!飛べました。これが空なんですね。風が気持ち良いです。」
彼女はそう言って笑顔を浮かべた。
「飛ぶスピードも調整できますし、私の魔力量ならどこまでもいけそうです。」
「過言かと思ったが、案外そうではないかもしれないな。」
そして、私も地を蹴り上げて、空に浮かび上がった。
「空を飛ぶのも神術で行っているのですか?」
「神術といえばそうだが、これは私の体内に飛行術式を描いているから飛べているわけだ。その術式を起動させればいつまでも飛べるのだよ。」
「術式を体にって、それはかなり痛いのではないでしょうか?」
「術式を体に刻むのは少々痛いが、今はそんなに痛くないし、一々術式を描くのも大変だから都合が良い。」
「むむむ。私もやってみましょうか」
そう言って、彼女はおもむろに服を脱ぎ出そうとした。
「やめよ!!というか、貴方には羞恥心はないのか?
「おやおや、照れているんですか?神様も魔女とはいえ、人間の裸に興奮するんですか?」
彼女は、イタズラっぽい顔を浮かべてそう言った。蟲惑な笑みを浮かべながらチラチラっと肌を見せてくる。
「神を揶揄うとは不敬だぞ。あと、貴方の柔肌に術式を刻まれるのは忍びないのだが。」
「心配してくれるんですか?大丈夫ですよ、そんな顔をしなくとも。」
「何か誤解している気がするんだが。まあいい。ここは一つ、ここからあの山まで飛んでみようか。」
「おお、いいですね。負けませんよ。」
すると彼女は好戦的な笑みを浮かべた。
「私が勝ったら、貴方には私のお願いをなんでも一つ聞いてもらいます。」
「勝負のつもりはないのだが。まあ、乗ってやろう。」
その言葉を皮切りに、私と彼女は一気に飛び出した。
「負けましたぁ。ぜぇぜぇ。思ったよりも遠かったのもありますが、貴方、速すぎるんですよぉ。」
「まあ、こればっかりは慣れがものを言うと思うからな。あとは出力だな。とはいえ、出力を上げすぎると小回りが効かなくなるから、難しいところだ。」
「しかも、貴方、息を全然切らしていないじゃないですか。」
「そりゃまあ、鍛えているからな。」
彼女はどうやらお冠のようだった。
「まだまだじゃのぉ。修行が足りんぞい。」
「いや、誰目線ですか。しかも、口調が変わりすぎです。」
こういうシチュエーションだと、こういうことを言うものだと思っていたのだが。まあいいか。
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