第11話 天空杖アルシエル
ガルダの体は、バラバラに砕け散っていた。
「うわぁ・・・惨いですね。しかも私の魔術でちょっと傷をつけた程度だったのに。」
「これが私の力だ。そう、簡単に耐えられると思われたら困る。」
そう言って、私はガルダの身体をまとめ始めた。
「さて、欲しいものを回収して撤退するとしよう。こいつの死体目当てに魔物が増えそうだしな。」
「それが、ガルフォンだけで良かったので、ガルダのことは考えていなかったんです。」
「なるほど。では、コイツを持って、家に戻ろうか。」
「はい。」
そして、私と彼女は家の倉庫前に戻った。バラバラにして、持ち運びに地味に苦労したので、心臓か頭を潰すだけの方が良かったかなと後悔するギルファルガであった。
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家に戻って、まずはバラバラにした体から重要な器官を取り出す作業に入った。
「心臓は触媒として、重要。翼や脳、骨も研究として使えます。ガルダの体内構造も解明できましたし、これを羊皮紙に記して、肉は食べるとしましょう。」
「疑問に思ったのだが、それを売ったりはしないのか?」
「そこまで、金が必要というわけではないですからね。研究の分で十分稼げていますし。ああ、もしかして、何か必要なものでもありましたか?今までの働きの分給料を出しましょうか?」
「いや、これは借りを返しているだけだ。必要ない。」
「そうですか。何か、申し訳ありませんが、あなたがそう仰るのなら。」
そう言いつつも、彼女の顔には不満があった。まあ、供物をもらう寛容さも神には必要と言われたことがあるからな。
「では、ガルダの骨と翼、血を貰っていいかな。なに、少しだけでいい。」
「それくらいなら。しかし、何をするおつもりですか?」
「それは出来てからのお楽しみだ。」
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「さて、こちらが持っている工房を出してもいいが、あれ、デカいんだよなぁ・・・。借りるのも悪いし、仕方ない、作るか。」
そして、山からたくさんの木材を持ってきて、土と一緒に一つの小屋を組み立てた。
「彼女も見ていないし、この中なら、制作道具を使えるか。」
私は宝物庫から、いろいろな宝石と鉱石を取り出した。どれも風属性の神術のための触媒だ。
「骨と血を触媒として、宝石や鉱石はこの世界のレベルに合わせれるよう、調律して、それでいて、簡単に壊れないようにしよう。さて、術式を起動しようか。」
「錬創術式開放・神力量を調整、この世界の魔力規格に合わせられるよう、演算。同時進行で素材を陣の上に配置。素材の生命情報を確認。魂魄浄化を確認。これにより、暴発の抑制が可能となる。この世界の魔力規格の演算完了。それに沿うように、素材を調整。調整完了、この結果を持って術式の構成に至る。全工程が終了。では、術式起動
すると、複雑に描かれた方陣と横に書き並べられた、術式が鈍く光り、素材がまとまっていった。そして、数分が経過すると方陣と術式が消え、一つの杖ができていた。長さは120メト、棒のところはガルダの骨を中心に周りに神界の鉱石の一つである、ロドニスでコーティングされ、杖の中心部分には、魔力を貯められるように設定された、宝珠が加えられ、装飾として、1対のガルダの羽が付加されていた。
「うむ。なかなかの出来だ。まあ、杖だから槌は使わないで良かったが。さて、彼女に持っていくか。」
そして、私は家に戻ったのであった。
「あ、おかえりなさい、ギルファルガさん。あれ、その杖はなんですか?」
「様をつけろと言いたいところだが、まあいい。これはガルダの死骸と私の持っている素材で作った、杖だ。少々大きいが、いい杖だ。魔力も貯蔵できるから、いざという時に使って欲しい。まあ、プレゼントというやつだ。」
「こんな、すごいもの受け取れません。それに報酬として、素材を渡したのに、これでは意味がありませんよ!?」
「何、鍛治の腕が鈍っていないかのテストだったし、我ながらよくできたと思うんだが、貰ってくれると嬉しいが、まあ、どちらでも構わない。」
「でも、それではあなたに得がないではないですか。」
「そうでもないさ。色々と研究もできたし、何より、君の笑顔が見れると思ったからな。」
「そんなことを言われたら、貰うしかないじゃないですか。」
そして、彼女は杖を受け取った。
「わあ、重そうなのに結構軽いですね。それでいて、結構頑丈です。魔力も良く流れます。」
「とはいえ、あなたのものにするのなら、一つやることがある。あなたの杖ということで、この杖に、あなたの血を少量、宝珠に入れ込み、所有者の魔力貯蔵機能を励起させる。そして命名が必要だ。」
「それはいいですけど、名前は自由につけていいんですか?」
「構わない。ただ、カッコ悪い名前はつけないで欲しいかな。」
そして、彼女は少し考え込んだ・・・・・。
そして、数分が経過し、彼女は顔を上げた。
「決めました。この杖の名前は、天空杖アルシエルにします。」
そう名前をつけ、彼女はナイフで少し肌を傷つけて、血を宝珠に流し込んだ。
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