第9話 ガルダ2

「風魔法でプライドをへし折ってやります。」

そう言いながら、彼女は可愛らしい顔に獰猛な笑みを浮かべた。

「性格変わっていないか?それともそれがあなたの本性か?」

「いえいえ、そんなことはないですよ・・・おほほほほ・・・」

彼女は誤魔化すように言いながら杖を構えた。




「属性指定・風属性 オリジナル極級風属性魔法起動・神疾風かみはやて・輪転」






竜巻が吹き荒れた。その竜巻はガルダを呑み込み、かの鳥に傷を負わせていく。





「どうですか、この威力、いくら空の王と言っても逃げられないでしょう。さあ、竜巻と言う名の牢獄で削られなさい、その身が果てるまで!!!!!」

「ノリノリだな。まあ、さすがは深淵の大魔女といったところか。」

竜巻の中からは、凄まじいまでの悲鳴が上がっていた。それでも、倒れないのは王としての意地だろうか?あるいは生存本能だろうか?などと思っていると、竜巻の内側から、魔力が吹き荒れた。そして、それ以上に竜巻の内側からの威圧感が増した。

「まあ、そんな簡単に死ぬわけがないか。」

「嘘でしょう!?あの魔法は理論上山一つを削り取るほどなのに!!!」

「一旦距離を取るか。この場にいたら巻き込まれるぞ。」

「巻き込まれるって何ですか!?!?!?」

そう言う彼女を傍に抱え、その場から距離を取るために、跳躍した。10キロルくらい下がったその時だった。




竜巻が爆ぜた・・・・




無論、爆発したという意味ではない。内側から構成されていた竜巻が解除され、あたりに風が吹き荒れたと言うことだ。その風は近くにあるあらゆるものを全て切り裂いた。




「GRUOOOOOOOOOOOOOOAOAAAAAAAAAOAOOAO」

ガルダは叫び、その体の周囲よりいくつもの竜巻を呼び出した。そして、竜巻はあらゆる方向に向かって放たれた。

「なんて、出鱈目な。」

「どうやら、空の王の名は伊達ではないらしい。あの竜巻は周囲を破壊することで、我々の隠れられるところを無くすついでに、私たちがどこのいるのかを探るために放たれたと見ていいだろう。」

「あの無数の竜巻がガルダの感覚器になっているということですか?」

「まあ、そんなことだろう。さて、どうする?君の放った魔法は奴の身を削った代わりに奴の闘争心を目覚めさせたようだ。おそらく、さっきのようにはやれないだろう。」

「さっきまでは油断していたということですか?」

「ああ。さて、ゆっくりする暇もなさそうだぞ?」

竜巻が迫っていた。

「竜巻が感覚器ということは、まさか!?」

「ああ、もうそろそろ向こう側も気付くだろう。さて、そんなところで、君に質問だ。おそらくこのまま逃げてもあの竜巻は止まらずに広がっていくだろう。そして、ガルダ自身も追ってくるだろう。さあ、ここで仕留めるか?」

「ええ。これは私が起こしたことです。自分のしたことには自分で責任を取るということが筋でしょう。」

そして、彼女は不敵な笑みを浮かべた。さて、反撃に移ろうとした次の瞬間、ガルダはいきなり、竜巻を吸収し始めた。

「なぜ、竜巻を収めたのでしょうか?」

「これは、まずいな。おそらく見つかった。」

「なんで!?骨は上手く隠していたのに!?まさか、あの一瞬で私たちの魔力を記憶したということですか!?」

「なるほど。というか、魔力を隠蔽する魔法とかはないのか?」

「そんなのあるんですか!?」

「普通、ありそうだが。特に暗殺者とかにはうってつけの魔法なんだが。」

「そういう魔法は聞いたことはありません。魔道具とかでやっているのでしょうか?」

「あなたの知らないところでありそうな気もするが。仕方ない。生きて帰れたら、私の神術と、この世界の魔法を合わせた上での隠蔽魔法を教えよう。」

「何から何まですみません。」

「構わないさ。あなたには恩もあるし、これくらいなら、許容範囲だ。」






*キロル=キロメートル











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