第7話 空の王

 朝起きると、彼女が外で何かをしていた。近くにあるのは、昨日私が狩ってきたガルフォンの骨と翼などであった。そう言えば、触媒にすると言っていたな。

「おはよう、朝から励んでいるな。」

「おはようございます。結構早い時間なんですけど、もしかして、起こしちゃいましたか?」

「安心しろ。たまたま早く起きただけだ。」

「それは良かったです。ちなみに今作っているのは飛行魔法です。」

「今、思ったんだが、魔法の起動に触媒として素材がいるのはわかるが、どうして、作成に必要なのだ?」

「その理由は主に二つです。一つ目は、ガルフォンがどのように飛んでいるのか、骨格から考察することです。」

「肉は昨日食ったがな。」

「いえいえ、それは大丈夫です。そして、もう一つは魔法だけでなく、この際、魔道具としても作ろうかなと思ったんです。」

「魔道具か。ちなみに作ってどうする?帝国にでも献上するのか?」

「それは・・・。ごめんなさい、今は言えません。」

そうして、彼女は目を伏せた。どうやら、彼女には何かしら、のっぴきならない事情があるみたいだ。だが、今は言えないと言ったところから、無理やり聞き出すのは良くないだろう。それに、この星の滅亡につながるようなことでなければ、表立って干渉することは禁じられている。今の状況も結構危うい気もするが。


「まあ、言いたくないのならば、それで良い。ただ、作業に煮詰まっているのなら、まずは朝食を食べないか?腹が減っては、研究できるものも出来なかろう?」

「はい。ではそうしましょう。」

そして、彼女はさっきの悲しげな顔が嘘のように、ニッコリと微笑むのであった。




 無論、朝食は私が作った。いつも、彼女が食べているものに、昨日作ったシチューを加えた感じだ。そして、朝食を食べ終わった後、彼女に頼んで、この世界の魔法について、調べた。

「簡単に言えば、神術を人間用に分かりやすく噛み砕いた感じか。だが、魔法や魔術が神術の下位互換とは言えない。人間にも使えるよう、うまく調整されているところもある。コスパを考えると、魔法・魔術の方がいいという場面も出てくるかもしれないな。そして、魔法と魔術の違いについてだが、これもまあ、簡単に言えば、威力と精密さ、そして効果の違いと言ったところか。魔法は魔法陣のみですぐに行えるというものだ。それに対して、魔術は複雑な式や陣、時には触媒が必要となるものか。魔法とは、魔の法故、法として定められているものしか使えない。魔術とは、魔法では行えないことを行うために作られたものだと考えられる。」

そう、考えていると、皿が置かれる音がした。

「お茶にしましょう。お互い煮詰まっているでしょうし。」

そして、紅茶を飲みつつ、一息ついたところだった。

「ギルファルガさん、今日の午後、宜しければ、魔の森に行きませんか?」

「私は構わないが、何をするのだ。」

「ガルフォンの調査です。思えば、かの魔物はあまり調査されていないんですよ。」

「魔の森を巣としていて、危険だから、調査隊を出せないとか?」

「他にも細かい理由はありますが、おおまかな理由としてはそんな感じです。」

「いいだろう。調査も一区切りついたし、リフレッシュとして、行こうか。」

そして、昼食を食べた後、装備を整えて、魔の森に向かった。




向かった先は、昨日ガルフォンを倒した所だ。すると、彼女が何かの骨を取り出した。

「この骨を元に、ガルフォンの巣を逆探知します。」

そして、彼女は魔法陣を敷き、術式を書き並べ、陣の中央にガルフォンの骨を置いた。




「鑑定魔術起動・痕跡を辿るものチェイス・クロニカル





すると、魔法陣が輝き一つの線が空に伸びた。その線は伸び続けて、谷に向かった。

「あそこがガルフォンの巣といった所ですか。さあ、向かいましょう。」

そして、彼女と私は魔術が示した谷へと向かった。





 そこにがたくさんの生き物がいた。ガルフォンやエストライガー、他にも様々な動物、植物がいた。

「こんなにいるとは。しかし、多いので、どういう生物がいるのかを調べて、ここは退散しましょうかね。」

「ああ、これだと狩って持って帰るをしたら、すぐに追いかけてくるだろうからな。」

そして、彼女と一緒に生態系を調べて、帰ろうとすると、巨大な影が地面に写った。




「GYOOOOOOOOOOOOO」





それは、ガルフォンをはるかに上回る大きさだった。見た目はガルフォンだったが。

「何ですか、あの大きさのガルフォンは!?もしかして、ガルフォンの亜種?それとも進化形態?それは、さておきここはまずいです。逃げましょう。」

そして、彼女と逃げようと走り出したその時、その大きなガルフォンがこちらに目を向け、翼をはためかせた。

「あいつ、こっちに向かってくるぞ。しかも、殺気をたぎらせながら。」

「ええ!?何で!?どうして!?攻撃もしていないのに!?」

「多分、その骨から同族の気配を感じ取ったんじゃないかな?」

「ということは、昨日私たちが食べたガルフォンは・・・・・」

「まあ、奴の舎弟だったということか。」

「嘘でしょう!?くぅ、痕跡を辿った後、置いてくれば良かったです。」

「まあ、過ぎたことは仕方ない。対処するとしよう。」

そして、私は彼女を守るように、前にたった。





「あの威容、今朝読んだ書物にあったな。違うかもしれないが、あれはガルフォンを束ねるもの、ガルフォンの上位種、空の王ガルダか。」





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