第3話 終極の調律神に至るまで(後編)
翌日、国王が他国に宣戦布告を行った。もちろん勇者である、カイロスはそれを止めた。
止めるために、カイロスは王城に私と一緒に向かった。
「父上、何をしているのですか。」
「もちろん戦争じゃ。魔族との戦いが終わった今、次はワシが世界を支配するのじゃ。」
「そんなの、魔王と変わらないじゃないですか。こうなったら、民のため、父上、あなたを止めます。」
「息子風情がぁぁ、ワシに逆らうつもりかぁぁ。もう良い、貴様なぞ用済みじゃ。」
そう国王が言った瞬間、周囲の兵士が一斉に勇者に攻撃をし始めた。防具をしていればともかく、祭服を着て、武器も持っていなかったがカイロスは、頑張って防いでいった。
「無能どもが。ザコ一人倒せぬか。もう良い。カイロス、これを見よ。」
映し出されたのは屈強な兵士たちに捕えられた、シャリア、レニス、ラクシャ、そして私の妻、カグラの姿であった。
「英雄と言っても、薬で眠らせ、不意をつけばこのザマだ。」
「父上、貴方はそこまで堕ちたか。」
「なんとでもいうが良い。さあ、この者たちを殺されたくなければ、カイロスとゲイブ、自害しろ。」
実の子供にすら、この仕打ちとは、薄々察していたとは言え、この国はどこまで狂っているのだ。
「わかりました。だだ、ゲイブも助けてください。そうすれば、この首ここで掻っ切ってやりましょう。」
「いいだろう、息子の最後の頼みくらい聞いてやろう。」
そして、カイロスは差し出された短刀を躊躇いなく、自分の首に突き刺した。
「さあ、ゲイブよ、死ね。」
この腐った奴がこの現場を見た私を生かしておくはずがないか。その時、死んだはずのカイロスが起き上がった。
「うぁうぅxjんsjsんすsんw」
「国王よ、何をした。」
「さっきの短刀は特別製でな。切った対象を傀儡にし、操るという魔剣じゃ。お前にもそうなってもらおう。安心しろ、お前らの妻はワシらがめいいっぱい犯して、性奴隷になってもらう。」
「貴様ぁぁぁぁ。」
「おっと、動くなよ、お前の妻を殺されたくはないだろう。さあ殺れ、カイロス。」
そして、私はカイロスだったもの切り捨てられた。
「グワハハ。さあ、そいつも傀儡にしてやれ。そうだ、あの女達も呼べ。しかし馬鹿だなあ。お前達の妻はとっくに殺されて、傀儡にされているというのに。ああ、あやつらの最後の言葉はなんじゃったか?私たちはどうなってもいいから、あの人には手を出さないでか。滑稽じゃったのお。泣き叫びながら、犯され、殺されていくところは年甲斐もなく、興奮してしまったわい。グワハハハハハハハ!!!」
その言葉に激しい怒りを感じたその時、虚空から声が響いた。
「魂だけ、残しておいて正解だったわ。もとより、この戦いもそいつらが、我の領土に攻め入り、強奪を凌辱を繰り返したことが原因だったのに、のお、そこの剣士よ、仇を取りたくはないか?」
そして、魔王の残滓とも言えるものが、私の体内に入っていき・・・・・
「グワハハハハハハハ、さあ、どの国を攻めようかの。」
「ええ、楽しみです。デュフフ。」
「これも神の思し召し。我々神の使徒がこの世界をすべるに相応しい。」
国王とその側近や教皇らが笑いながら戦争の計画を立てていた。私は扉を蹴破り、中にズカズカと入っていった。
「貴様、生き汚いやつよの。まあいい、それなら今度こそ甚振りながら確実に殺すとしよう。」
「貴様ら、もはや醜悪すぎて見るに耐えん。そして、教皇もいるということは、教会も腐っているということだ。教皇よ、貴様の信奉する神もろともぶち殺してやる。覚悟しろ。」
「なあ!?神を侮辱するとは、異端者!悪魔!さあ、その不届きな悪魔を殺すのです。それこそが神の信徒として、正しい行いなのです。」
そう奴らは喚いていた。こんな奴らのために、我々は戦っていたのか?こんな奴らの下種な欲望の為に、友や妻は死んだというのか。
許さぬ、許さぬ、許さぬ、許さぬぅ、許さぬぞぉぉぉぉぉぉ!!
心の中でそう思った瞬間、私は剣を振り上げて、私を囲んでいた兵士を殺した。
「なに!?ワシらの精兵が、こうもあっさりとやられるとは。」
その様子を見て、大臣や司教達は恐れ慄いた。
「臆するで無い。こちらには切り札たる兵士が、まだ残っている。早く来い、こいつを殺せぇぇぇ。」
そうして出てきたのは殺され、傀儡と化してしまったかつての仲間。魔王を倒す時には友として一緒に戦った者達。そして、我が妻となってくれたカグラ。大事な人たちが死してなお弄ばれていることに憤怒と憎悪が湧き上がる。そして、彼らが私を攻撃し始めた。多勢に無勢かつ、世界トップレベルが相手だったので、徐々に押され、ついに殺されると思った。
その時だった。
彼らの攻撃の手が止まった。
「頼む。もう、終わらせてくれ。君をこれ以上傷つけたく無い。」
そう、刀を持ちながら、息も絶え絶えに、カグラは答えた。他の皆んなも悲しげな表情を浮かべていた。それだけで、彼らを苦しみから解き放とうと決意した。
「すまない、守れなくて。」
そして、私は傀儡を殺す専用の装備を取り出し、彼らを斬殺した。そう、私はこの手で友を、妻を殺したのだ。それにより、私の精神は発狂し、意識は暗転した。
気がつけば、王城付近を血に染め、教会を破壊して、この世界の神と思われる存在を殺していた。この身を魔王に委ね、命乞いをしていた国王どもを殺し、教会を壊滅させ、遂には神を見つけ出し、なぶり殺した。しかし、この狂った身体はそれでは止まらなかった。そして、星そのものを葬ろうとした・・・・・
「やれやれ、なんか変な感じがすると思ったら、滅びかけの星を見るとは。」
そして、気がつくと私の心臓に大きな槍が突き刺さっていた。
「これは世界の敵となった存在に対し、作られた神の槍だ。とは言え、なるほど、君が狂うに値することが起きたということか。そして、狂いながらも無辜の人々は殺さなかったということか。星を滅ぼそうとした罪は消えないが、情状酌量の余地はある。魂は回収させてもらうとしよう。」
結論から言うと、私はこの神、私の師匠となる天輪神アトラス・アルデニルによって、神界に連れられ、主神たるアラム・ファルネスによって神族の仲間入りを果たす。そして、ギルファルガと名前を変え、自らの贖罪も兼ねて、部下や眷属と一緒に、全存在の魂の調律、堕ちた神の討伐、終焉を迎えそうな世界をリセットするなどの仕事を行い、主神から終極の調律神の神格を賜り、気がつけば、数百億年の時を経ていた。
「終極の調律神ギルファルガよ、暴食神カルバムが邪神と化した。すでにいくつもの星を滅ぼしている。奴を滅ぼし、秩序を取り戻せ。」
「了解しました。我が神、我が王よ。」
そして、今日も贖罪を果たす。
※傀儡 ゾンビみたいなもの
後編だけ長くなってすみませんでした。ギルファルガが神となった経緯はこんな感じです。ギルファルガの部下や神となってからの仕事の様子などはこの話を進めていく中で回想編2や3も交えて、伝えたいと思います。面白いと思った方や、この神の経験した他のエピソードが知りたいとか、「この国王ゲスすぎる」と思った方は⭐︎⭐︎⭐︎やブックマークのほどお願いします。
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